1996 Fiscal Year Annual Research Report
北海道の道央以北での縄文時代における木材利用に関する研究
Project/Area Number |
08610418
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
三野 紀雄 北海道開拓記念館, 主任学芸員 (80113471)
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Keywords | 道央以北地域 / 縄文時代 / 住居址 / 炭化した木質遺物 / 樹種同定 |
Research Abstract |
北海道道央以北地域の縄文時代における木材利用状況について、13遺跡より採取した木質遺物を住居の構造材料、道具や什器の材料、燃料に区分けして分析研究した。なお、道東及び道北地域から得た試料は少なく、結果的には調査・検討が道央地域の遺跡が中心となった。また、これまでの分析研究を補足するために、道南の太平洋沿岸地域の縄文時代の遺跡から得た木質遺物についても調査・検討を加えた。 調査の結果、次の事柄が明らかとなった; 1)住居の構造材料:ヤチダモと推定されるトネリコ属材は時代を限らず道内で広く用いられていた。本研究の目的の一つであった「コナラ属材の利用に関する時代的、地域的な広がりを明らかにすること」に関しては、(1)コナラ属材が道央地域において縄文中期から後・晩期にかけて頻度高く利用されていることが、また(2)積丹半島の海岸近くに成立する縄文時代中期の遺跡ではクワ属材(ハマグワ?)の利用が顕著であることが。(3)これまでその利用が縄文中期の道南地域が中心であったクリ材が道央地域の縄文後期には利用されていたことが、また、(4)擦文あるいはオホーツク文化時代のオホーツク海沿岸地域に利用が限られていたモミ属材(トドマツ類)が道央地域でも利用されていたことが、今回明らかになった。 また、縄文時代の道南地域に関する補足的な調査で、函館市を中心とする地域に加えて、南茅部町など太平洋沿岸でも広くクリ材が使用されていた可能性を示すデータが得られた。 2)道具や什器の材料:調査資料数は少ないが、分析研究した縄文後・晩期の道央地域の遺跡ではコナラ属を中心にカエデ、カバノキ、ハンノキ属、クリ材などが利用されていた。 3)燃料:他の地域と同様に、時代を限らずコナラ属材を中心に雑多な樹種の木材が利用されていた。 今回の分析研究は、上記のとおり、ややもすると道央地域にかたよりがちであるので、今後は道東・道北地域についてさらに調査・検討を加えるとともに、道央地域に関しては時間的また空間的により綿密な調査・検討を加える計画である。
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