Research Abstract |
今年度は,現地調査および資料分析を,鹿児島県奄美大島笠利町の用見崎遺跡で実施した.同時に,遺跡周辺のサンゴ礁における海産貝類の生態分布調査も行った.また,これまでに得られたサンプルの処理も継続した. サンゴ礁海域に面した砂丘遺跡である用見崎遺跡の弥生時代相当層,ほぼ無遺物の砂丘形成層,そして古代・平安時代相当層から,連続した堆積物をサンプリングし,そのサンプルからフローティング法によって,微小貝類を抽出した.亜熱帯の砂丘地域は非還元的な環境であり,有機物の分解が速く,また土壌間隙も大きいために,この地域では花粉分析等が実施できない状況にあった.砂丘遺跡においても,多数の微小陸産貝類が得られた.その種組成及び量的組成から,この遺跡では下部の弥生時代相当層の時代には林縁的な環境にあったものが,砂丘形成期を経て,古代の層では草原的な環境になり,平安時代相当層にまた林縁的な環境になったことが示された.このように,亜熱帯の砂丘遺跡でも,陸産貝類を指標に,遺跡周辺の環境の復元が可能であることが示された. 今年度は,その他にも,沖縄の12世紀頃の遺跡から,ヌノメカワニナを中心とする層準が確認され,戦前の耕作土層の貝類組成と大きく異なっていることがわかった.このヌノメカワニナの優占する層準は,稲であるかどうかは不明であるが,水田である可能性が高いと考えられた. また,南島の貝輪の素材として最も良く利用されていたゴホウラの採集された遺跡の立地場所を,海図や航空写真を用いて検討した結果,いずれもサンゴ礁のリ-フの切れ込んでいる場所であることがわかった.その意味については,来年度に詳細に検討したい.
|