1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610421
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Yokosuka City Museum |
Principal Investigator |
稲村 繁 横須賀市自然博物館, 学芸員 (70250230)
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Keywords | 人物埴輪 |
Research Abstract |
地域毎に平装男子・正装男子・武装男子・女子・盾持人などにわけて人物埴輪を集成してみたが、その結果人物埴輪の種類を越えて普遍的にみられる表現方法と、種類によって異なる表現方法が存在することが判明した。具体的には、眉・目・鼻など顔面部の表現においては種類に関係なく同じ表現をとるものが圧倒的に多いのに対し、帽子・冠・衣服などでは職掌によって明確に違いがみられる。また、古式の人物埴輪は写実的表現が多いのに対し、終末期では形式化が進行している。このような表現方法における普遍性と個別性、および製作時期の違いにより表現方法や成形技法が変化していることをふまえたうえで、共通した製作技法を有する埴輪製作集団を抽出してみると以下のような特徴を有する5地域の集団が想定される。腕成形における木芯中空技法を代表とする茨城県北部地域、全身像における分離成形技法の茨城県中部地域、全身像を製作せず、腕・美豆良を同じ円錐形の部品から製作する千葉県北東部地域、腕成形における木芯中空技法を有し、上着裾を突帯で表現する埼玉県北東部地域、写実的な大形全身像を製作する群馬県地域などである。この他の地域でも埴輪製作集団の存在は想定されるが、顕著な地域的特徴を有しないことから、明確には分離できない。この背景には他地域に技法を伝播する拠点的埴輪製作集団と、これらの影響下に成立した非拠点的埴輪製作集団の2者が存在するためと考えられる。したがって、埴輪製作集団間には技法伝播のルートが存在することが想定される。また、神奈川県などでは全く地域色がみられないことから、他地域の製作集団が製作に直接関与した可能性が高い。
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