1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610431
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
沼本 克明 広島大学, 教育学部, 教授 (40033500)
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Keywords | 訓点資料 / 漢字音 / 梵語音 / 声点 / 濁音 / 拗音 / 入声音 |
Research Abstract |
本研究は、密教系訓点資料を中国語・梵語という外国語との接点にある資料群として規定した上で、日本漢字音・梵語音の形成、日本語自体への自覚、日本語文字表記法の発達等の研究を進展させることを目指したものである。 その結果、現段階において、次の様な諸点が明らかになってきた。 1.日本語に存在しなかった拗音・入声音・撥音の表記法は、従来漢字音のみの視点から問題とされてきたが、梵語音も、それと対等の位置にある、「外来語の表記」として工夫される様になったものと考えねばならない。 2.拗音の中、合拗音はその表記法の確立が遅れたが、これは、梵語音にこの音節が本来存在しなかったということが大きな要因となっている。 3.音声・濁点の日本側に於ける使用は、これらも又従来漢字音から始まったというのが定説であるが、これらの初出資料は密教系訓点資料の梵語陀羅尼から始まっており、梵語音の忠実な学習の一環として始まったものと考えねばならない。即ち、漢字音から梵語音へという見方は逆転しなければならないであろう。 4.梵語音から始まった理由としては、漢字音が、平安初期当時、直接中国語母語話者からの学習が可能であったのに対して、梵語学習はそれが不可能であって、より一層の研究の対象化が必要とされ、種々の試みや工夫が要求されたからであると解釈出来る。
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Research Products
(2 results)