1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610440
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
木村 東吉 島根大学, 教育学部, 教授 (90031814)
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Keywords | 宮沢賢治 / 『春と修羅第二集』 / 詩集の成立過程 |
Research Abstract |
遺稿整理時番号および黒クロース表紙メモの再検討を通して詩集の成立過程と最後の状態を解明し、「《春と修羅第二集》最終構想の輪郭」(「国語と国文学」74巻4号 1997,4発表予定)としてまとめた。また、詩集が詩群単位で形成されていることを順次確認する作業を進め、「月の山路に秘める心は-《春と修羅第二集》外山紀行詩群考-」(「島根大学教育学部紀要・人文社会科学」第30巻 1996年12月)「峠の空に見つめるものは-《春と修羅第二集》五輪峠紀行詩群考-」(島大国文」25号1997年2月)として発表した。 自筆原稿の調査については、本年度が宮澤賢治生誕100年の行事のため、宮澤賢治記念館の都合によって7月に予備調査と打ち合わせをおこなった他は1月及び3月まで待つことを要請されたので作業時期が若干遅れた。しかし、詩稿の半分以上を調査することができ、作品ごとの成立過程として整理されている『新校本宮澤賢治全集』を詩集の成立過程として捉え直し、翻刻の誤りを20箇所以上正し、詩稿成立順序の誤りについても一例正すことが出来るなど今年度の予定を達成した。 なお、1月には、副次的調査として岩田道治・恵子夫妻についても聞き取り調査を行い、貴重な資料を得た。その過程で、宮澤賢治が本尊とした曼陀羅の紙の色が、元は緑色であったことがほぼ確認された。これは《春と修羅第二集》と裏腹の関係にある「銀河鉄道の夜」におけるジョバンニがもつ「どこまででもいける切符」が、この曼陀羅を意味していたことを証拠づける有力な資料となるはずである。これによって、《春と修羅第二集》成立の背景が解明されることになる。このほか、本年度中にまとめた論文には「賢治童話の暗い部分」(「国語教育論叢」第6号 1997年2月)がある。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 木村東吉: "月の山路に秘める心は-《春と修羅第二集》外山紀行詩群考-" 島根大学教育学部紀要・人文社会科学. 30. (1996)
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[Publications] 木村東吉: "峠の空に見つめるものは-《春と修羅第二集》五輪峠紀行詩群考-" 島大国文. 25. 42-61 (1997)
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[Publications] 木村東吉: "賢治童話の暗い部分" 国語教育論叢. 6. 67-78 (1997)
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[Publications] 木村東吉: "《春と修羅第二集》最終構想の輪郭" 国語と国文学. 74巻4号. 55-68 (1997)