1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610448
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Research Institution | Koka Women's College |
Principal Investigator |
山本 登朗 光華女子大学, 文学部, 教授 (40210538)
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Keywords | 伊勢物語 / 注釈 / 書き入れ / 写本 / 冷泉家流 / 鉄心斎文庫 |
Research Abstract |
三年間にわたる科研費による研究の結果、鉄心斎文庫所蔵の伊勢物語写本のうち、書き入れを有するもののほとんどすべてを調査し、撮影することができた。これができたのは、旅費や撮影フィルムの焼き付け費などの大半を科研費によってまかなえたからであり、まことにありがたい機会をいただいたと感謝している。 三年間の研究のまとめとして、調査した書目を一覧する解題目録を作成したいと当初は考えていたが、そのような作業だけでは、かならずしも内容ある成果につながるとは言いがたい。また、昨年度に、山本がほとんどを執筆した『鉄心斎文庫伊勢物語図録14』が「注入り伊勢物語の世界」というタイトルで鉄心斎文庫から刊行されたが、そこには書き入れ注を有する写本のおもなものがほぼ網羅されており、その結果、別にあらたな一覧を作る意味も薄れたように思われる。研究成果は、やはり個別の問題を考察した論文の形で示されるべきであろう。 そこで、鉄心斎文庫所蔵の書き入れ注を有する写本のうち、もっとも重要と思われる本のひとつである「堯恵加注本」をとりあげ、それにまつわる問題を徹底的に考察して論文「堯恵と伊勢物語-鉄心斎文庫蔵『堯恵加注承久三年本校合伊勢物語』をめぐって-」にまとめ、勤務校の『光華女子大学研究紀要36号』(1998年12月)に発表した。堯恵流の歌学における伊勢物語理解のありかたがこの本の内容の検討によってかなり明白になるが、それにあわせて、書き入れ注を有する写本がその形のまま享受されることによってどのような結果が引き起こされるか、その一例についても述べたつもりである。 書き入れ注をめぐるこれ以外の問題については、今年度中に論をまとめることができなかったが、この三年間の蓄積をむだにしないよう、いずれ機会を得て順次考察を発表してゆきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)