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1996 Fiscal Year Annual Research Report

中世連歌における源氏物語の受容

Research Project

Project/Area Number 08610451
Research InstitutionKyoto Prefectual University Women's College

Principal Investigator

安達 敬子  京都府立大学女子短期大学部, 助教授 (90194555)

Keywords源氏物語 / 源氏詞連歌 / 後土御門院 / 後相原院 / 宗祇 / 三条西実隆
Research Abstract

室町文芸の基盤たる連歌の源氏物語受容とそれに基づいた創作活動の実態解明という本研究の課題について、本年度は源氏物語の文章表現を踏まえた和歌・連歌の注釈分析を通じて、室町期の詩歌における雅語意識についての考察を中心におこなった。その結果として得られた知見は以下の通りである。
純正連歌の完成期と考えられている15世紀末から16世紀にかけて制作された源氏詞連歌に見られるようないわゆる源氏詞は、同時代の普通の連歌作品においても同様のものが頻出し、またその用いられ方もやはり源氏詞連歌と同じく源氏原典の文脈をも念頭に置いて作られているものが多い。源氏詞連歌における源氏受容のあり方は、突出したものではなく当時の純正連歌における源氏受容の様相をそのまま濃縮した形で反映したものと考えられるのである。
こうした傾向は七賢時代からその萌芽を見出すことができるが、より顕著になったのは16世紀初頭宗祇が連歌壇を完全に制圧してからであった。連歌の源氏受容の動向は宗祇の連歌論や源氏物語研究と大きく連動していることが予想され、それについては、彼の連歌注釈や紫塵愚抄などの源氏抄出、また宗祇の薫陶を受けた三條西実隆の源氏研究などとの共通類似点が、質量ともにきわめて多いことから確認することができた。
また源氏詞連歌のよまれた「場」については、当時の古記録類から天皇を中心とする堂上公家たちの歌人グループが和歌の稽古も兼ね、万葉詞・伊勢物語詞・古今和歌集詞などと共に古典作品の表現を連歌に取り込むために集中的に作られていたことが明らかになった。連歌・和歌の語彙を増やすための修練のである。これは、表現意識において従来峻別されてきた和歌と連歌の用語の差異がなくなりつつあることを意味する点で注目される。
以後の和歌・連歌における源氏詞の作例の傾向を概観すると、用例数は増大の一途をたどり、またその用法ももはや原典の文脈を離れて全く自由につかわれている。いわば源氏物語という固有名詞からはなれ普通名詞化しているのである。しかもそれらの中には、従来ではおよそ詞歌には用いられなかったような単語(例えば「駒」ではなく「馬」)も含まれており、源氏詞が源氏物語という権威で以て、雅語の枠組みを拡大しながら新しい自由な表現を可能にしている様を窺うことができる。

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Published: 1999-03-08   Modified: 2016-04-21  

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