1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610452
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Research Institution | Hiroshima Women's University |
Principal Investigator |
樹下 文隆 広島女子大学, 国際文化学部, 助教授 (70195337)
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Keywords | 能楽 / ワキ / 春藤 / 宝生 / 能役者 / 芸能史 / 謡本 / 謡伝書 |
Research Abstract |
1.前年度に引き続き、春藤家・下掛かり宝生家の系図類の調査と整理を行なった。本研究の出発段階で予定していた系図類については、その調査を終了し、相互の比較検討を行なった。特に、山口県文書館毛利家文庫蔵『御家来之公儀被召出者』所載の春藤・東条系図は、春藤・虎菊・下掛かり宝生の関係を示すもっとも古い資料で、戦国期の系図に不備があるものの、従来知られている春藤系図の信憑性を裏づけるものであることが確認できた。また、本研究の過程で新たに存在を確認したもののうち、今年2月に古書肆目録に登場した能楽伝書数点に含まれる能役者諸家の系図は、目録掲載の写真や旧蔵者等の関係から相当良質のものと期待できる。それらの購入先は把握しているが、今年度中の調査は断念せざるをえず、来年度を期したい。 2.前年度の調査で名前の判明した江戸末期頃の関係者の調査を通じて、江戸初期の資料の発掘に努めた。春藤家・下掛かり宝生家とも、江戸初期の資料は散逸しているが、関係諸家の資料により、特に下掛かり宝生家の初代に関する新資料を確認できた。 3.各地に散在する春藤家・下掛かり宝生家の役者の演能記録について、享保頃までの演能記録を調査した。特に、地方諸藩における下掛かり宝生家先祖の活躍は、予想以上の広範囲に及ぶことが判明した。このことは、地方における江戸役者の活動を考える上で、従来の考えを改めるべき重要な意味を持っている。 4.前年度に引き続き、各地に展開した春藤流の弟子について調査し、春藤流役者の分布状況を調べた。その結果、諏訪・薩摩・岡山・岩国・松本・松山においても、春藤流役者の存在を確認できた。 5.春藤流・下掛かり宝生流にかかわる伝書・謡本の調査を行なった。当初予定していた詞章・所作等の流儀的差異については、確かな証拠を見いだせず、今後の課題としたい。
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Research Products
(1 results)