1997 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス文学モダニスト理論に関する実証的研究-グレイヴズ/ライディングを軸として-
Project/Area Number |
08610482
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
園井 英秀 九州大学, 文学部, 教授 (00069709)
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Keywords | グレイヴズ / ライディング / モダニズム / 伝統主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は20世紀初頭のイギリス文学においてモダニスト思想は究極的に不定着であるとする仮説を、マヨルカにおけるロバート・グレイヴズ及びローラ・ライディングの共同文学活動を軸として実証的に検証することにある。本年度は(1)ローラ・ライディングの批評理論におけるモダニスト理論と共通の感覚を有する部分を分析し、それがロバート・グレイヴズの詩作及び批評意識にいかなる影響を及ぼし得たか、(2)グレイブズの詩作及び批評がライディングの影響を離脱する過程においてかなる特質を示すか(3)1940年代以降のグレイヴズの詩作においてライディングないしモダニスト詩のインパクトがいかに否定されるか等についての検討を主として行った。この結果次のような問題点が明らかになった。 (1)ライディングの批評理論はモダニストと異なる独自の論点を有し、それはモダニスト理論の弱点を指摘するものであること。グレイヴズはこの特質を含むライディング理論を正確に理解することはなくEpilogue(1935〜1937)においてはイギリスの伝統的批評姿勢を示す。これはライディングからの詩的解放を予測させる変化である。 (2)グレイヴズ独自の詩的成熟はモダニスト詩の特質とは異なる方向性を持つこと。即ち、それは詩の特権的性質を否定し、本質的に経験的現実的価値を重視すること。批評姿勢はEpilogue以降、「白い女神」理論として発展し、モダニスト理論と異なる詩作理論を構築する。この理論の詩作に対する影響は象徴的文体と要約し得る。 (3)1920年代イギリス文学におけるモダニスト詩との接近は積極的に避けられるが、T.S.エリオットの文体のインパクトは批評的に認識する。他方、パウンドの価値は偽物とし、イェイツはその象徴的文体の未熟さにより退けられる等の反モダニスト批評を検証し得る。 以上の所見を踏まえ、総合的な検証を10年度に行う予定である。
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