1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610518
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石川 達夫 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (00212845)
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Keywords | プラハ / チェコ / 東欧 / 都市 / 地名 / 民族 |
Research Abstract |
プラハの様々な固有名詞を調べてゆく過程で、文化史的に極めて興味深い事実が判ってきた。第一に、固有名詞が伝説・文学その他の幻想と密接に関係し、それを反映していること。例えば、「プラハ」という地名自体、伝説によれば、チェコ最初の公女リブシェの予言に出て来る「プラーフ」という語から生まれたとされている。これは元々「鴨居」の意味だったが、後に「敷居」の意味に解されて、「敷居」に伴う象徴的な意味を付与されてきた。あるいはまた、プラハ城裏の「黄金の小道」の名前の由来は、本来はここに住み着いた金細工師に由来するものであるが、オカルトに係わっていたルドルフ二世との関連で錬金術師に由来するという説明が為されるようになった。第二に、伝説が次々と更なる伝説や芸術作品を生んでいったこと。例えば、リブシェ伝説は、スメタナのオペラ「リブシェ」を始めとする多くの芸術作品を生んでいる。第三に、宗教的・国家的・民族的に複雑な歴史を経てきたプラハでは、固有名詞の変遷に文化史が反映していること。例えば、プラハの「ヴルタヴァ川」は、ドイツ人の支配下でもっぱら「モルダウ」というドイツ名で呼ばれ、スメタナの交響詩「ヴルタヴァ」さえも、本来のチェコ語名ではなくて「モルダウ」というドイツ語名で世界に広まってしまった。あるいはまた、プラハの有名な「等族劇場」と「国立オペラ・プラハ」は、どの勢力がヘゲモニ-を握るかによって、何度も名称を変えてきた。以上、概要を述べたプラハの固有名詞をめぐる問題については、論文としてまとめて、近く発表する予定である。ところで、プラハの文化史との関連で極めて興味深いのは、プラハの現実が、即ち町そのものが、どのように改造・変容されてきたかである。これについては現在研究中であり、今後明らかにしてゆく予定である。
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