1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610535
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
菅原 克也 東京工業大学, 外国語研究教育センター, 助教授 (30171135)
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Keywords | 俳句 / haiku / R.H.ブライス |
Research Abstract |
本年度は、主として昨年度に行ったB・H・チェンバレンの俳句理解に関する研究と、一昨年度より継続しているR・H・ブライス研究の成果をふまえて、英訳俳句(ハイク)及び英語で書かれるハイク、または俳句の影響の著しい英語の詩に、いかなる「詩学」が機能しているか、またいかにしてそれらが「詩」として成立しているかを検討することが中心的な課題であった。 そのために、本年度は日本の俳句の影響が夙に指摘されているエズラ・パウンドの作品のなかから、俳句の「詩学」に通底するパウンド一流の「詩学」の在処をさぐり、それが基本的には西欧の修辞学にいうメタファーとメトニミーを駆使したものであることを確認した。この知見により、ブライスの『俳句』四巻にあらわれる英訳俳句が、元の(日本語の)俳句作品にあらわれる様々なイメジャリーを、メタファー及びメトニミーとして対照させる技法に深く寄りかかるものであることが、ブライスの英訳俳句の具体的な解釈を通じて明らかになった。これは、戦後の北米英語ハイクの成立にブライスの『俳句』四巻が、与えた影響の大きさを省みるなら、看過し得ない大きな意味を持つことになる。すなわち、第二次大戦後北米を中心に数多く書かれた「ハイク」なるものが、基本的にはメタファーとメトニミーという西欧古来の修辞法に強く寄りかかるものであることが判明するからであり、それが「ハイク」として書かれる事実は、日本の俳句の「詩学」に東西の文化の隔たりを越えた普遍的なものが含まれていると考えるに足る、一つの手がかりを提供することになるからである。 本年度は、本研究課題の最終年度として、以上の結論を得るとともに、第二次大戦後の北米英語ハイクの歴史的経過を明らかにすべく「北米英語ハイク年表」を作成し、今後の更なる研究に資することを期した。
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Research Products
(1 results)