1996 Fiscal Year Annual Research Report
立憲政の比較法文化史的研究-ロシアと西洋における主権と所有権
Project/Area Number |
08620015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大江 泰一郎 静岡大学, 人文学部, 教授 (00097221)
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Keywords | 専制 / ロシア / モンゴールのくびき / ロシア国家学派史学 / ローマ法 / 主権 / 所有権 / 立憲手記 |
Research Abstract |
本年度の研究の中心に捉えた問題は、研究の結果次のようにまとめることができるようになった。すなわち、人権による下からの圧力によって制約された政治権力こそが近代的主権にほかならないという近代立憲主義の基礎概念の相互連関、言い換えればオット-・フォン・ギ-ルケによってはじめに示唆され、のちにフランス人権宣言第16条によって定式化され、さらにパンジャマン・コンスタンによって理論的に構成されるに至った近代立憲主義における国民主権(ないし人民主権)と人権とくに所有権との有機的連関、それはなぜロシアでは形成されなかったのか、というものである。 この点にかかわるソビエト史学および今日の段階でのロシア学界の通説、ロシアにも西欧と同様の封建社会が形成され、その上に立つ未成熟な資本主義の上に社会主義革命が起こったとする見方はいまや完全に説得力を失っている。これについて私はかねてから19世紀ロシア国家学派史学の、ロシアには封建制が存在しなかったというテ-ゼが新しい意味ももつことを主張してきた。今年度はさらにこの問題を発展させる方向において、西欧が封建社会の法的素材をローマ法によって整序しつつあったその時代に、ロシアは「モンゴールのくびき」の下でさなぎだに脆弱な社会の法的な構成が「上からの[いわば無法の]権力」によって破壊尽くされ「専制」の伝統が定着した、という着想を得ることができた。 来年度の課題はこの着想をより精密に再構成し、ロシア社会史の具体的資料によって肉付けしながら、西欧の発展との比較を深めることにある。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 大江泰一郎: "「旧ソ連邦をめぐる国家継続および承継」" 「旧ソ連・旧ユ-ゴスラビア及び旧チェコスロバキアの各構成国の条約・国家財産・債務及び国籍の承継について」(外務省委託研究報告書). (近刊). (1997)
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[Publications] 大江泰一郎: "「ロシア国内法への国際法の影響」" 「ロシア連邦の立法動向(仮題)」(外務省委託研究報告書). (近刊). (1997)