1997 Fiscal Year Annual Research Report
「公私混合行政協働システム」と自治体「市場化」の法的研究
Project/Area Number |
08620019
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Research Institution | Senshu university |
Principal Investigator |
白藤 博行 専修大学, 法学部, 教授 (90187542)
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Keywords | 機関委任事務 / 地方分権推進委員会勧告 / 行政改革会議最終報告 / 公私混合行政協働システム / 民間化 / 行政の効率性 / 自治体の市場化 / 構造改革 |
Research Abstract |
地方分権推進委員会の4次にわたる勧告が出され、これを踏まえた自治省「機関委任事務制度の廃止後における地方公共団体の事務のあり方及び一連の関連する制度のあり方についての大綱」(1997年12月)に基づき、地方分権推進計画の策定および地方自治法改正が準備される段階となった。一方、行政改革会議の最終報告をもとに、中央省庁等改革基本法案が国会において審議されるにいたっている。これは、まさに日本国家構造改革と自治体改革が、「この国のかたち」論の中心的課題とされてきたことを意味する。行革会議を理論的に支えた行政改革委員会官民分担活動小委員会の示した市場原理最優先主義の原則は、果てしない「行政の効率性」追求を要求した。国においては、中央省庁再編論と行政のアウトソーシング論として具体的に展開され、自治体においては、事務事業目的評価システムの導入を含む行政システム改革論、行政の民間化(民営化、民間委託)論、市町村合併論が大きなうねりとなった。このような国家構造改革と自治体改革が、「国家観の転換」あるいは「行政責任の構造転換」を求めるものであるところにこのたびの「行政改革」の最大の特徴がある。しかし、早急な国家構造改革論・自治体改革論が、「行政の効率性」のみを追求するあまりに、「行政の公共性」を解体し国家と自治体の「市場化」が行われ、改革論そのものが、反法治主義的性格、反福祉国家的性格および反民主主義的性格、すなわち反憲法的性格を帯びざるをえなくなったことも指摘しなければならない。法学的に見ると、「行政の効率性」を憲法問題として、すくなくとも法的問題として捉える視角が不可欠であることが明らかとなった。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] 白藤 博行: "地方分権の行方と地方自治" 法学セミナー. 48巻8号. 39-42 (1996)
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[Publications] 白藤 博行: "地方分権論の現在" 人間と教育. 12号. 91-97 (1996)
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[Publications] 白藤 博行: "分権後の民主的地方自治制度のあり方" 自治体学研究. 72号. 12-17 (1997)
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[Publications] 白藤 博行: "地方分権推進委員会勧告における「国と地方公共団体との対等性」論の法的検討" 行財政研究. 34号. 2-9 (1997)
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[Publications] 白藤 博行: "行政の「現代化」と新しい自治体運営モデル〜最近のドイツの自治体改革の議論動向に着目して〜" 都市問題. 88巻5号. 67-77 (1997)
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[Publications] 白藤 博行: "地方分権の焦点" 自治体問題研究所(自治体研究社), 268 (1996)
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[Publications] 二宮 厚美: "国家改造と自治体リストラ" 自治体問題研究所(自治体研究社), 307 (1997)
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[Publications] 宮本 憲一: "機関委任事務と地方自治" 日本地方自治学会(敬文堂), 263 (1997)
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[Publications] 二宮 厚美: "自治体の「市場化」" 自治体問題研究所(自治体研究社), 301 (1998)