1997 Fiscal Year Annual Research Report
国家社会内の独自の歴史・言語文化共同体としての「地域」概念の有効性の検証
Project/Area Number |
08620050
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
志柿 光浩 東北大学, 言語文化部, 助教授 (60215960)
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Keywords | 国家 / 地域 / 民族 / エスニック・グループ / ネーション / プエルトリコ / 沖縄 / 住民投票 |
Research Abstract |
本研究では米国との関係におけるプエルトリコ、日本との関係における沖縄という二つの事例について、〈一定の地理空間を歴史・言語・文化的な同質性の基盤として有するが、独自の国家社会を形成することはせず、歴史・言語・文化的同質性の範囲を越えたより大きな国家社会内にとどまることを前提として、その国家社会内で「相違と平等」を追求しようとしている人間集団が構成する政治単位としての地域〉という概念を指定し、これを上記の事例に適用し、その有効性の検証を試みた。 プエルトリコについては1998年3月、アメリカ連邦議会下院でプエルトリコの地位に関する住民投票実施法案が可決されたが、その検討過程でも従来に引き続き「固有性を保持したままで、州制移行」という議論が出された。また特筆に値するのは、英語公用語化を押しつけようとする修正案が否決され、プエルトリコの独自性を尊重しつつプエルトリコを州として迎え入れようという議論が連邦議会の側でも強く主張された点である。ヒスパニック人口及び移民人口の増加の問題は現在、米国で大きな議論を引き起こしているが、プエルトリコについては「相違と平等」の主張が受け入れられる可能性のあることが明らかとなった。 沖縄については、「復帰」後四半世紀を経て沖縄の独自性についての自信が深まったことが指摘される一方で、平成7年に起きた米軍兵士による小学生強姦事件を契機に米軍基地の集中に象徴される日本の他の地域との不平等についての不満が噴出した。このような背景の中で米軍基地の撤去を要求する大田知事の立場は、沖縄の独自性を自覚しつつ日本の他の地域との平等性を要求する立場であると捉えられる。日本でも道州制などの議論が出てきており、今後「相違と平等」の議論が広まる可能性がある。
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