1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08620054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
梶田 孝道 一橋大学, 社会学部, 教授 (10133357)
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Keywords | 外国人 / 参政権 / 外国人参政権 / 国籍 / 市民権 / 定住外国人 / 国際労働移動 / デニズン |
Research Abstract |
西欧先進諸国および日本では、外国人(移民)の定住化が進みデニズンとしての地位が少しずつ認められるにつれて、外国人の政治参加と参政権の問題が浮上してきた。オランダやスウェーデンでは、外国人の地方参政権が認められ、外国人が参加した地方選挙それ自体も既に数回実施されており、この問題は政治学や社会学の分析対象となっている。そこで、外国人参政権行使の実態について、文献等を使って調べることとした。その結果、理想主義的に語られる内容と、現実にそれが作動する実態との間には、かなりのずれがあることがわかった。投票率の低さ、外国人議員の能力の問題は、その一例である。また、西欧諸国においては.外国人の多くがムスリムであることから、政治参加の問題は同時に宗教と政治との関係をめぐる問題となっており.続いて、宗教と政治参加との関係について、宗教教育の是非や「スカ-フ事件」について分析した。しかし、参政権の問題は、各国を取りまく特殊事情に大きく影響される。宗主国と植民地との関係.地域統合の進展による外国人への許容的態度の拡大、社会民主主義政権の存在、外国人の出身国とエスニシティという点での内実、外国人の総人口に占める割合、外国人排訴政党の有無.当該国の外交姿勢等が.外国人参政権問題に影響を与えていることがわかった。日本ではまだ外国人参政権は実現されていないが.大阪府や川崎市等の先進的な自治体における実験的な試みが開始されており.そうした自治体レベルでの試みに注目した。また、外国人参政権が現実化した場合に、イデオロギーにではなく日常生活の利害関係に照らしてみた場合どのような現実や結果が予定されるかについても考えてみた。1年間の研究の結果.この問題は.個別の事情を考慮しながら.できるだけ普遍的、一般的な論理で、比較政治の手法を使って分析することが必要な点があらためて確認できた。
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[Publications] 梶田孝道: "外国人参政権-西欧の経験と日本における可能な年" 宮島喬・梶田孝道編『外国人労働者から市民へ』(有斐閣). 99-122 (1996)
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[Publications] 梶田孝道: "多文化主義と民族的マイノリティの諸類型" 鴨武彦ほか編『国際政治経済システム3相対化する国境II』(有斐閣). 79-111 (1997)
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[Publications] 梶田孝道: "「移植されたイスラム」の行方-「スカ-フ事件」のなかのフランス" 山内冨之編『「イスラム原理主義」とは何か』(岩波書店). 278-306 (1996)
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[Publications] 梶田孝道: "文脈に拘束される民族認識" NIRA研究報告書(民族に関する基礎研究II). 960088号. 186-196 (1996)
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[Publications] 梶田孝道: "論争の中の「多文化主義」-問題群の整理の試み" NIRA政策研究. 10・2. 6-11 (1997)
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[Publications] Takamichi Kajita: "Multi-multiculturalism?" Multiculturalism in the U.S.and the Asia Pacific Region (Proceedingsot the Symposium). 139-150 (1996)
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[Publications] 梶田孝道: "国際社会学へパースペクチィブ" 東京大学出版会, 319+iii (1996)
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[Publications] 宮島喬・梶田孝道編: "外国人労働者から市民へ" 有斐閣, 237+xiii (1996)