1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08620058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
大津留 智恵子 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 助教授 (20194219)
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Keywords | アメリカ政治 / 議会政治 / 保守化 / 外交政策 |
Research Abstract |
本年度は、研究の焦点を「共和党革命」と称される、1994年選挙によって生じた第104議会の内部の変化に置き、特にクリントン政権と議会との対立が膠着状態を招いた1995年の政策決定過程をめぐっての資料調査を行った。そして、新しく生じた政治的力関係が、冷戦後の新しい世界秩序の形勢という課題に取り組む、米国の外交政策の基本方針の実施にどのような影響を及ぼしているかを考察しようとした。 議会多数派を長期独占した民主党のリーダーシップは政策を生み出す指導力に欠け、アメリカ政治は民主主義の欠落を唱えられる状態にあった。共和党革命は、一つにはそうした政治の反応の鈍さへの有権者の不満の爆発であったが、確固たる使命が共和党に委託されてはおらず、外交政策においては特に曖昧さが残った。しかし、下院ではギングリッチ議長の、また比較的中道に留まった上院でもヘルムズ外交委員長のリーダーシップのもとに、保守的イデオロギーが議会の外交政策をめぐる姿勢を支配し、これに国内政治での最優先とされた赤字削減という目標が合致したために、クリントン政権は唯一の超大国としての責任と見なした積極的外交政策の方針を実現できない事態に陥った。 しかしながら、政策の有効性という観点から見ると、議会が削減した対象はむしろ危機防止という先行投資的性格の強い対外援助であり、長期的には外交予算の縮小に寄与するものであった。逆に、議会が必要以上の出費を決定した短期的な国内の斜陽軍事産業の復活は、長期的には米国の資源の有効利用とは逆行するものであった。政策的に有用な選択肢が政治的力関係によっては必ずしも選ばれない実態を、1996年のクリントン政権や議会のリーダーシップの対応の変化を加味しながらさらに分析し、議会の保守化によりどのような外交姿勢の見直しが要求されているかを検討する必要がある。
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Research Products
(1 results)