1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08620058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
大津留 智恵子 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 助教授 (20194219)
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Keywords | アメリカ政治 / 議会政治 / 保守化 / 外交政策 |
Research Abstract |
本年度は、議会の「保守化」の多層性に焦点を置いて、冷戦後になって重視されるようになった問題領域と、それを支持する政治勢力、そして議会内のリーダーシップの具体的な役割に関しての研究を行った。一口に保守化と称される今日の議会であるが、具体的な外交政策としては必ずしも同じ方向性を持っていない。これは、特に問題領域の違いに起因している。冷戦後時に重要視されるようになった問題領域は、民主化(人権、文化、宗教)、テロ・麻薬・大量殺戮兵器の拡散などであるが、従来の対外援助のような政策が財政的保守派と孤立主義的保守派の反対を受ける一方、民主化や、新たな安全保障問題とみなされるテロ・麻薬政策は、他国から見れば内政干渉ともいえるほどであるが、単独主義的保守派からは支持を得ている。さらに、1997年には宗教的自由を守る法律や評議会が作られたり白書まで公表され、単独主義的勢力の背景に文化的保守派の影響力の強さが窺われる。同時に、大量殺戮兵器の扱いに見られるように、アメリカはあくまでも単独でリーダーシップを取ることに執着し、それがかなわなければ国際機関や国際世論と足並みを揃えないという特徴も見られた。かろうじて批准に持ち込んだ化学兵器禁止条約、土壇場で妥協した二酸化炭素排出規制、そして対人地雷禁止条約の署名拒否、UN未支払い金問題はその例と言えよう。こうした問題領域ごとに揺れ動く「保守」の現れ方は、同時に議会内の政治勢力の選択的な提携関係を物語っており、それだけに議会リーダーシップの役割を難しくしている。化学兵器禁止条約の批准審議をめぐっては、議会内リーダーシップの間で、法的な権限と政治的な判断の駆け引きすら行われることとなった。初年度に検討した、議会と行政府との外交における優先項目のくい違いが、議会内部でも問題となっていることが確認された。
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Research Products
(1 results)