1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08620062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
日暮 吉延 鹿児島大学, 教養部, 助教授 (30253917)
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Keywords | 国際軍事裁判 / 戦争犯罪 / 日本占領 / 政策決定 |
Research Abstract |
まず本年度は、集中的な資料調査を行なった。その結果、かなりの情報が蓄積されたが、なお不十分な部分は来年度および再来年度において継続して補う予定である。本年度の作業において調査収集しえた具体的資料は、国立国会図書館(東京都)所蔵の国務省文書複製版、憲政資料室所蔵の鮎川義介文書複製版、GHQ記録における民政局文書・外交局文書、外務省外交史料館所蔵の戦後外交記録(「日華平和条約一件」)等であり、また立教大学法学部図書室ではForeign Relations of the United Statesを調査した。 こうした調査作業と並行して分析作業も行なった。特に東京裁判進行中の諸国の行動を検討した結果、言葉の壁、訴因と関係国の数、証拠の量、日本政治の特異性といった要因から裁判が甚だしく長期化するにつれ、連合国検察官の間には深刻な危機意識と裁判に対する嫌悪感が生じ、こうした感情がいわば第二の東京裁判を阻止する作用を果たしたことが解明された。また、アメリカの外交官ジョージ・ケナンが戦犯裁判の帰趨に対して大きな役割を果していた。この関連で、戦犯裁判の終結過程が裁判の全体的評価にとって極めて重要な問題であることが分析過程で判明したため、来年度以降、裁判終結問題を重視しながら資料の収集分析を進めようと考えている。 なお本年度の研究成果の一部については、第4回近現代史フォーラム(平成8年11月31日〜12月1日、於横浜市)のシンポジウム「東京裁判を考える」において「検察の論理と裁判の展開」と題する報告を行なう機会を得た。この報告内容の子細は平成9年に五十嵐武士東大教授および北岡伸一立大教授の編纂で刊行されるので、その際に上記の研究成果を広く一般にも公表できることになる。
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