1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08620062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
日暮 吉延 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (30253917)
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Keywords | 国際裁判 / 戦争犯罪 / 日本占領 / 政策決定 |
Research Abstract |
第一に、平成8年度に引き続き、多数の未公刊一次資料を調査収集した。来年度の調査活動では、なお洩れる部分を補足することとなろう。本年度は、国立国会図書館憲政資料室所蔵の文書を調査したほか、アメリカ研究資料センターのForeign Relations of the United States、学習院大学所蔵のHenry L.Stimson Diaries複製版を調査し、戦中期におけるアメリカの対独戦犯処罰計画の形成過程に注目した点に特徴がある。 第二に、本年度は、調査活動よりも分析作業に重点が置かれた。これまで収集した資料の大部分についてに眼を通し、その重要文書を分析して総合的に位置づける作業を行なったのである。その結果、戦中期の連合国の対独戦犯処罰計画について注目することの重要性が確認された。これは上記の資料調査によるものだが、ドイツに対する政策決定が基本的に対日戦犯政策に転用されたこと、東京裁判をめぐる争点や議論のかなりの部分が原初的な形ですでに戦時中のワシントンやロンドンに現われていたことが判明したのである。そして、これらの問題については、英米のいくつかのニュルンベルク裁判研究があるものの、対日政策への影響という観点から体系的に検討を加えたものは内外でもほとんど見当たらない。それゆえ極めて大きな検討意義を有しており、この点を重点的に今後研究することを決定した。これは平成8年度の実績報告書に見通しとして予告した終結過程の分析--それ自体もいずれ検討するけれども--に先んじるべき課題であるから、その点で昨年度の予定とは異なる結果となったが、むしろ課題の合理的な修正だと考える。 なお平成八年度の研究成果については、平成9年10月、東京大学教授の五十嵐武士、北岡伸一両先生編纂による『[争論]東京裁判とは何だったのか』(菊地書館)において「検察の論理と裁判の展開」との題目で広く一般に公刊することができた。
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