1997 Fiscal Year Annual Research Report
クラーク経済学の形成とアメリカ社会学:クラークとギディングズの往復書簡の研究
Project/Area Number |
08630017
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 敏弘 関西学院大学, 経済学部, 教授 (20079643)
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Keywords | J.B.クラーク / F.H.ギディングズ / 限界生産力理論 / アメリカ新大典派 / アメリカにおける限界革命 |
Research Abstract |
クラークとギディングズとの往復書簡の解読とそのワープロ処理を第1年度にほぼ終了したので、第2年度はその分析に着手した。 まず第1に、往復書簡の概要把握に努めた。この往復書簡は、クラークからギディングズ宛の書簡が265通(約850頁)、ギディングズからクラーク宛書簡(コピー)が5通と長文のメモ1点からなっている。 クラークの書簡の約98%はクラーク経済学の重要な展開期である1886年から1895年にわたる10年間に集中していることが明らかになった。したがってこれらの書簡は、限界生産力的分配論を中核とした、アメリカの限界革命期におけるクラーク経済学の展開過程に、これまで以上に詳細で具体的な光を当てる経済学史的資料価値をもっている。 とりわけこれらの書簡の分析により、のち社会学者となったギディングズがクラーク経済学の展開過程において理論家として果した役割は、クラークとの共著者という範囲をはるかに越えたものであることがわかった。ギディングズはクラークの限界生産力理論を中心とする経済理論のほぼ全体について重要な討論者としての役割を果したにとどまらず、動学への展開、初期のキリスト教社会主義から「進歩的自由主義」へのイデオロギー的転換に対する影響は新しい知見として重要といえる。この研究成果は、はじめアメリカ経済思想史研究会(全国的学会)で1997年6月に報告され、同年12月には論文として『経済論集』(関西大学)47-5、1-20頁に発表された。書簡全体は今年度中には英文の解説論文付きでアメリカのJAI Press Inc.から出版される予定であり、これにより国内外の研究者にこの資料が完全に公開されることになる。
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Research Products
(2 results)