1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08630020
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
花田 昌宣 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (30271456)
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Keywords | 賃金決定 / 賃労働関係 / 比較制度分析 / レギュラシオン / 調整理論 / 団体交渉 |
Research Abstract |
最終年度である本年度は、これまでの成果を受けてさらに研究を継続すると同時に、中間的成果を発表した。とりわけ本年度は、日本の現状に焦点を当てて検討を加えた。本研究費補助を申請した時点から、日本の賃金決定を取り巻く環境がドラスティックに変化してきており、そのことの理論的分析に関して持つ含意の重要性に鑑みたとき、若干の軌道修正が不可欠であった。 とくに、この間の失業率の急速な高まりを背景に日本の賃金決定制度が、フランスでいわれている「個人化」の様相を急速に深めている。外見的に収斂現象といいうる事熊のもつ組織的制度的内実に関して検討を行った。 日本の賃金の景気感応性の高さは、企業主義的な労働=生産組織ならびに賃労働関係の特質であるが、それ自体、ナショナルなレベルでの制度の中に埋め込まれている。逆にフランスにおいてはナショナルなレベルでのフォード主義的賃労働関係をその変容が、企業組織を規定し、ナショナルな賃金決定とそれの企業における適用という形をとる。あたかも、ベクトルが日本においてはミクロからマクロへ、フランスにおいてはマクロがミクロを規定するといったような様相を呈している。さらに今日では、金融関係が賃労働関係を規定するようになってきており、分析を錯綜させることとなっているが、その金融-賃労働関係の連関においても、日仏のベクトルの働き方は同様である。 本研究の成果は、これらを制度ならびに組織面での両国における整合性とその変容を検討し、比較可能な条件の確定をはかり、それによる視座を確定したうえで、比較分折を行ったものである。
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[Publications] 花田昌宣: "雇用の不安定化と賃労働者社会の変容" 家計経済研究. 第41号. 38-45 (1999)
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[Publications] 共著 花田昌宣、八木紀一郎ほか: "復権する市民社会論--新しいソシエタル・パラダイム" 日本評論社, 298 (1998)
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[Publications] 共著 Masanori Hanada,J-P.Durandほか: "L'avenir du travail a la chaine" La Decouverte, 398 (1998)
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[Publications] 共著 Masanori Hanada,M.Freyssenetほか: "One Best Way? : Traiectories and Industrial Models of the World's Automobile Producers" Oxford University Press, 476 (1998)
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[Publications] 共著 Masanori Hanada,J-P.Durandほか: "Teamwork in the Automobile Industry:Radical Change or Passing Fashion" MacMillan Press, 454 (1999)
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[Publications] 共著 花田昌宣、山田鋭夫他: "戦後日本資本主義--危機と調整の分析" 藤原書店, 409 (1999)