1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08630034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 洋子 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (90202176)
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Keywords | ドイツ / 大企業 / 銀行 / 労働組合 / 共同決定 / ハウス・バンク / 株主 / コ-ポレート・ガバナンス |
Research Abstract |
ドイツ大企業は、日本と同様に現在大きな構造転換期に入りつつある.とりわけここ1、2年間の変化は戦後長期的に形成されてきた西ドイツの安定的な構造やそこでの企業観を根本的に揺らがしつつある.そのため、一方で1990年代までの安定的な企業構造を分析すると同時に、ここ数年間における変化の方向性を見ることの重要性が高まってきた. 一つの大きな流れの特質は、ドイツにおいても日本と同じように「市場化」の流れが進み、これまでドイツで重要視されてきた「協調」という価値観が掘り崩されてきている点にある.それはドイツ企業が積極的に「アメリカナイズ」された経営手法を持ち込み、実践にうつしていることに象徴されている.ヘキスト社社長ユルゲン・ドルマン、クルップ社社長ゲルハルト・クロメ、ダイムラーベンツ社長ユルゲン・シュレンプなど、ハーバード・ビジネス・スクール出身者を含めた50才代前半の経営者たちは、経営のアメリカ化を念頭に置き、ROE最重視の方針を掲げている.最も明瞭には新頭取ロルフ・ブロイヤーのもとでのドイツ銀行の方針に見られるように、ここ数年、様々な産業において自らが敵対的買収の積極的な仕掛人となり、大企業における最大株主としての安定性よりも、むしろあえて下位企業と組むことで、保有株式の収益性を追求しようとする方向性が打ち出されてきている. 次年度はこうしたここ数年間の新しい変化を前提に、戦後長い間「安定的な構造」であったものを分析していく一方で、それを転換させる新しい勢力との拮抗関係をも視野に入れて総括していきたい.
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