1997 Fiscal Year Annual Research Report
本土復帰後の沖縄社会経済構造の研究-類似5県との比較分析-
Project/Area Number |
08630051
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松田 賀孝 琉球大学, 法文学部, 教授 (80044832)
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Keywords | 本土復帰後の沖縄社会経済構造 / 県民所得 / 産業構造 / 観光産業 / 経済成長 / 対県外収支 / 労働生産性 / 付加価値生産性 |
Research Abstract |
本研究の課題は、類似県-島根・徳島・高知・佐賀・宮崎の5県-との比較で、沖縄県の経済構造の特質を浮き彫りにすることにあるが、これまでの研究成果の一部を列記すると次の通りである。先ず以て目を惹くのは類似県に比べ、第一次および第二次産業部門の比率がともに低く、第三次産業部門の肥大が著しい点である。これは、本県経済が本土復帰後、基地依存型から観光依存型へと性格を大きく変えたことと、農業部門の基幹産業である蔗糖およびパイナップルが農産物自由化の煽りを受けて衰退を余儀なくされたことによる。ところで、本県経済は外部依存性が高いと一般に言われているが、これは全くの誤解であることが判明した。移輸出依存度(移輸出/県民総生産)および移輸入依存度(移輸入/県民総生産)とも、類似県に比べはるかに低いのである。ただ、次の点に着目する必要がある。すなわち、移輸入の移輸出に対する比率では類似県中本県が最も高い点である。対県外収支の移輸入超過が著しいのである。移輸出力を強化し県外市場の開拓が求められる。本研究における産業連関表の比較分析の結果、本県の移輸入誘発係数、つまり需要の県外流出の度合いは、類似県に比べて決して高くないことが判明した。従って問題は、需要の県外流出にではなく、総需要に対する県外需要の寄与率の低さ、要するに需要の県内誘引の弱さにあることが明確になった。さらに本県の生産誘発効果は類似県にくらべ高いのである。つまり生産の需要に対する感応度がよく、潜在的な生産力を有しているといえよう。また大方の予想を裏切って、本県の労働生産性は類似県中最も高いことも判明した。ただし、製造業の付加価値生産性に限って言えば、本県の生産性は類似県並みに止どまっているばかりか、付加価値度が極端に低いという特質を有していることも析出することができた。
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