1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08630059
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
遠州 尋美 日本福祉大学, 経済学部, 助教授 (30168819)
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Keywords | 社会的生産基盤 / 地域コミュニティ / 産業地域 / 自治体産業政策 / まちづくり / 産業空洞化 |
Research Abstract |
円高・バブル期以降における製造業の海外進出の急進展とバブル崩壊後の不況の長期化によって,産業空洞化への懸念がかつてなく高まっている。このような中で,平成8年度,9年度にわたり,東京都墨田区,東京都大田区,愛知県西三河地域を中心に,バブル崩壊後の長期不況と円高による地域産業への影響と,地域産業の活性化に関わる地域的生産基盤と地域コミュニティの役割を検討した。 1.製造業における海外進出の急進展と長期の不況は,これまで日本経済の発展を担ってきた主要産業地域における共同生産ネットワークを解体しようとしている。とりわけ,大田区や西三河地域における中小企業への影響は深刻で,製品開発とプロセス・イノベーションを生み出すシステムの根幹を揺るがしている。すなわち,空洞化懸念には十分な根拠がある。 2.しかしその半面,グローバル化によって,税制あるいは金融インセンティブを主たる手段とする国家の産業政策の役割が低下しており,大企業の海外進出をくい止める規制手段がとれない以上,中小企業自身が従属的下請関係から脱皮し,より積極的な経営姿勢を確立するとともに,解体されようとしている共同生産ネットワークを主体的に再構築することが急務である。 3.この課題を達成する上で,自治体の役割が重視されるのは当然であるが,不特定多数に対し平等の原則で展開される自治体の産業振興策は,重大な岐路に立たされている。3M運動など先進的な地域産業政策を展開してきた墨田区も例外ではない。社会的生産基盤の中核となるライフエリアの整備など「まちづくり」と地域産業の連携をはかる需要創造型の支援体系の確立が必要となろう。
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