1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08630070
|
Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
平本 厚 東北大学, 経済学部, 教授 (90125641)
|
Keywords | 電子部品 / 電子工業 / エレクトロニクス / 産業史 / ラジオ工業 / 共同研究 / 中小企業 |
Research Abstract |
本研究の最終年度である今年度は、戦後の電子部品企業の成長過程に関する各社社史・資料の収集と関係者のヒアリングに努め、他方、無線雑誌、業界新聞などの資料収集をも行った。その結果、電子部品企業の戦後の成長過程について大きな見通しを得ることができた。得られた新しい知見は以下のとおりである。 1.戦前の電子部品産業の形成では、一方には多数の専門中小企業があり、他方には有力な多角経営大企業の一部門としての部品生産と有力セットメーカの内製があった。 2.この形成期の電子部品産業の構造は、技術革新にとっては良い環境ではなかった。 3.したがって、終戦直後の日本の電子部品の性能、品質は大きく国際水準より劣っていた。しかも、戦後の通信事業の復興やラジオ工業の発展(スーパー化)にとってはそのことは大きな問題であった。 4.その課題に対応する部品の技術革新にとっては、「電解蓄電器研究会」や「紙蓄電器研究会」、「関西抵抗体委員会」などの、公的研究機関、部品企業、材料企業などによる共同研究が大きな意味をもった。コンデンサ材料の品質の向上、電解コンデンサ製造技術の向上、P型炭素皮膜抵抗器、ソリッド抵抗器の開発、アルカリレス磁器管の採用、品質管理の導入などの革新が1950年前半までに活発に行われた。 5.しかし、テレビの登場は、それでも電子部品の性能、品質は全く不十分であることを明らかにすることになった。さらに、トランジスタの出現による小型化の要請はいっそうの革新を要請した。さらなる革新と品質の向上が求められたのである。しかし、それに対応できた電子企業は高成長をとげたのであった。 6.その量産には生産の自動化も重要であったが、それは特有な企業間競争構造の中でいち早く普及した。
|