1996 Fiscal Year Annual Research Report
1960年代における地域振興政策と農村の変容に関する歴史的研究
Project/Area Number |
08630072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西田 美昭 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00017542)
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Keywords | 地域開発 / 構造改善 / 農村の変容 |
Research Abstract |
本研究の目的は、茨城県と新潟県という日本を代表する基幹農業地帯をフィールドとして、1960年代の地域振興政策と農村の変容の関連を具体的に明らかにし、その歴史的意味を問うことにあり、そのため研究代表者の演習に参加している大学院生および加瀬和俊(社会科学研究所、教授)の協力をえて、以下の作業・分析を行った。 1.茨城県、竜ヶ崎市・東町等の構造改善事業(1962年より実施)関係の資料-村役場・土地改良区・農協資料-を収集し、構造改善事業の目的・結果を対照しつつ、その問題点を明らかにしつつある。 2.村・および市で立案・作成した地域振興計画と農業の関係について当時の関係者から聴取を行った。 3.東町所蔵の「農業センサス」(1960、1965年)「農業基本調査」(1971、1976年)の個表を使用し、構造改善事業に積極的に応じる農家と消極的対応をみせる農家の経営内容上の対比を行いつつある。 4.新潟県では、「西山光一戦後日記」を久保安夫氏と共同で編集を進めている過程で、1964年に新潟市近郊農村である小新集落において、農業的土地利用をめざす小新潟の干拓から都市的土地利用をめざす開発へというドラスチックな転換が明らかとなった。この転換の要因について「日記」を基本としつつ分析している。 以上の分析作業の結果、茨城県・新潟県においても、鹿島臨港開発、新潟東港開発にも影響されて、1960年代以降農村構造は大きく変容すること、構造改善事業や農道整備といった「農業近代化事業」も、農業基盤を強化する効果よりも兼業化を促すなど農村の「空洞化」をもたらす側面が大きかったことが明らかになりつつある。 来年度は、これまでの分析をさらに進めるとともに、当時の関係者が所蔵する資料を収集・分析し、あわせて聴取調査を実施し、研究課題について取り纏めることとしたい。
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