1997 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける労働時間短縮と余暇に関する史的研究
Project/Area Number |
08630073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣田 功 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90055236)
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Keywords | 余暇 / 有給休暇制度 / ヴァカンス / 8時間労働制 / フランス人民戦線 / 週40時間労働 |
Research Abstract |
昨年は、第一次大戦期の8時間労働制導入を契機に労働者の余暇問題が新たな展開を見せ、36年の人民戦線内閣における年次有給休暇制度の成立で頂点に達した両大戦間期に焦点を合わせ、前史として20世紀初頭の10時間労働制と週休制の問題を検討した。今年度は、両大戦間期の歴史的意義を明らかにするために、時間的視野を広げ、19世紀の余暇について検討した。この時代、観光旅行や夏期や冬季の長期ヴァカンスの習慣は、すでに富裕層(貴族・地主・中産階級)に広く浸透しはじめ、鉄道の発展と並行して観光地の形成、ホテル、レストランの発展などが見られた。他の文化諸形態の場合と同様に、19世紀末になると、労働者は富裕層の旅行やヴァカンスの習慣の模倣を目指し、労働時間の短縮や週休を要求・獲得し、さらに公務員や一部事務職員層は有給休暇を獲得するにいたった。その意味で余暇やヴァカンスは19世紀末以後の文化の「大衆化」と「民主化」の一面を形成するものであった。第一次大戦は労働者の国民への統合をもたらすことによって、この過程を進める上で画期的意義を持った。このような過程は、19世紀後半以後の西欧では普遍的に見られた現象であった。今後の問題は、この過程のフランス的な特質がどのような点にあったかを検討することである。来年度は、フランスよりも余暇研究が進んでいるイギリスを中心に国際比較の観点からフランスの特質を検討したい。
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