1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08630074
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福澤 直樹 名古屋大学, 経済学部, 講師 (10242801)
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Keywords | ドイツ史 / 経済史 / 社会保険 / 労働者保険 / 社会政策 / 社会保障 / 福祉国家 / 社会国家 |
Research Abstract |
本年度はまず最初に、第二帝政期の社会保険についての従来の研究状況を整理し、研究動向「ドイツ第二帝政期の社会保険の形成と展開をめぐって」にまとめた。従来の研究における社会保険展開の政治的文脈からの理解、そこから派生する社会保険の限界が一面で指摘されている旨、さらに他方で社会保険がもたらした積極的効果にも着目されるようになった昨今の研究状況を整理した。しかし同時に世界に先駆けたドイツの社会保険展開の経済構造的側面からの究明がまだ十分でない旨も確認された。そこで次の論文「世紀転換期ドイツ労働者保険の改革議論」では、社会保険が実際には当時の経済社会の要求に合致しきれず、徐々に変容を遂げてきた点、そこでは政府や政党、種々の経済的利害や行動様式をもつ労使団体等、各種の集団が各々独自の役割を演じ、そうした利害の錯綜が社会保険諸立法を単一法体系にまとめた1911年の帝国保険令の多義的性格をもたらした点などを明らかにした。だがその議論も当時の経済構造と制度の展開の直截的因果関係を明らかにしたものではなく、その解明がさらに求められる。それをさらに次の論文「ドイツ帝国保険令の成立過程・・・世紀転換期ドイツの経済構造分析より・・・」においてより明瞭にすべくReichsarbeitsblatt誌などをはじめとする同時代文献を検討すると共に、経済史をベースとした社会政策研究の専門家であるベルリン自由大学のH・フォルクマン教授を訪問、同問題について議論した。また実証分析上重要な一次文献(ドイツ連邦文書館、プロイセン文化資料館所蔵文書等)について同教授より教示を受け、それに基づき資料を蒐集、今後それを詳細に分析していく予定である。論文脱稿を以て第一次大戦前の分析を一旦完了し、以後ヴァイマ-ル共和国期の社会保険分析に移行する計画である。
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