1997 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ産業革命の再検討ースレイタ-工場を中心にー
Project/Area Number |
08630080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 泰男 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90051482)
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Keywords | 産業革命 / 技術移転 / 前貸問屋制 |
Research Abstract |
スレイタ-工場およびその出資元のアルミ-・ブラウン商会において、先進国イギリスの技術がいかに導入されたかを、収集した史料により分析した。その結果、これまでに明らかになった点は以下の通りである。 1.技術移転にあたり、アメリカ、ロードアイランド州ポタケットの現場の担当者たちは、自分たちのしている仕事の意義を認識していたとはいい難い。現に、アークライト式水力紡績機が完成したことの記録、それにより初めて紡績がなされたときの記録すら正式には残っていない。 2.イギリスの技術を導入するにあたり、従来はイギリスからの移民であったスレイタ-の役割が強調されていたが、ロードアイランドの現地の手工業者が大きな貢献をしていたことが明らかになった。とくに工場における機械はいわばシステムであるので、水力紡績機だけでは役に立たない。その点、土地の木工あるいは金物職人が、さまざまな役割を果たしたことが重要である。 3.紡績工程のみの機械化は、全体としての近代化をもたらしたわけではない。準備工程におけては、手作業が必要であったので、前貸問屋制の下で農村の子女などが働いていた。また、織布工程において、力織機はまだ導入されていないので、手織工に頼ることが必要であり、問屋制のみでなく徒弟制度の利用もおこなわれた。この過程は現在分析中であるが、いずれにせよ、新しいものと古いものとの共存が、アメリカ産業革命において見られたといえる。この点の分析をさらに進める予定である。
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