1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08630085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
于 毅波 一橋大学, 商学部, 講師 (80272764)
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Keywords | 人為的低金利政策 / 内生的成長 / 預金金利規制 / レント / 人的資本 |
Research Abstract |
直接的金利効果から見れば、預金金利規制は、貯蓄意欲の減退と金融資産の蓄積の停滞を招いてしまうという効果をもっている。しかしながら、この直接効果でも、金融資産の水準及び預金の代替金融資産の状況に大きく依存すると思われる。日本では、戦時及び戦争直後の急激なインフレーションによって、金融資産の実質価値が大幅に低下し、資産の均等化も進んできた。また、証券市場が未発達で株価が極めて不安定であった。このため、復興期及び高度成長期の日本では、金融資産の選択には収益性より流動性と安全性が選好されていた。つまり、この時期においては、預金の利子弾力性が低く、この直接的金利規制効果がわずかしかなかったと思われる。 一方、預金金利規制は、護船団方式行政の下で、銀行にレントを与え、それによって銀行のブランチング・ネットワークの強化とサービスの向上を促進し、銀行の安全性に大いに寄与してきた。また、歩積み・両建てによって企業の預金も強制的であったが、相当の水準に維持されてきた。その結果、金融深化が促進されて、貯蓄が減るどころか、増えてきていたのである。また、預金金利規制から得られたレントをもって、銀行は積極的に人的資本に投資し、融資と投資の効率性を高め、経済発展にも直接寄与してきていたと思われる。さらに、預金金利が厳格に規制され、貸出金利は実質的に市場に任せるという金利規制体制の下では、預金金利規制による預金者所得損失の大部分は企業に移転され、企業の発展ひいて経済発展にも大いに貢献してきていたと思われる。
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