Research Abstract |
高齢化・小子化社会における負担のあり方を考える場合,しばしば言われる所得・消費・資産の課税バランスが問題となる。現在,政府収入に占める割合を見ると,それぞれ73%,15%,12%である。社会保険料を含めて,所得への依存が大きい。それだけでなく,近年,所得税率,法人税率の引き下げが求められており,その課税ベースを広げるにしても今後大きく所得に依存することはできない。であるとすれば、消費課税か資産課税となる。 今回,現行の消費課税としての消費税に今後大きく依存する場合に生じる問題点を扱った。特に問題となるのは,1つは,帳簿方式の採用であり,今1つは,課税最低限の水準や簡易課税制度といった中・小規模事業者対策である。OECD諸国で付加価値税を採用し帳簿方式を用いているのはわが国だけである。インボイスを用いてもさほど変わらないという意見もあり,また,インボイスを用いることによって問題がなくなるわけでもない。しかし,今後税率を大きく引き上げ,消費税に依存していくのであれば,税額計算における透明性の一層の確保は必要であり,そのためにもインボイス方式の採用が求められる。その際,税額を別記しない,即ち,税込みの商品価格を表示するだけのインボイス採用国の例もあるが,税額・税率をインボイスに別記する方式が望ましい。特に,軽減税率を導入するなど複数税率を採用する場合そうである。また,課税最低限を設けてもいいが,その水準は1,000万円以下に思い切って引き下げるべきである。また,諸外国の例から簡易課税制度はなくすことも可能である。これらの措置を設けるメリットは否定しないが,事業者にとって消費税は消費者からの預かり金であり,税制への信頼を確保するためにも益税を正当化することはできない。
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