Research Abstract |
本研究の目的は,民間企業との比較において,地方公共団体での組織や業務の実状と情報技術利用実態を把握し,組織や業務の改善・改革と情報技術との整合性を図る方法論を構築することである.組織体として両者を見た場合に,目標,評価・決定基準など大きく異なる側面を持つが,経営という側面から見ると共通点も多い.そこで,情報技術の活用について,作業仮説を設定するとともに,民間企業と地方公共団体との実証的な比較研究を実施した。その分析枠組みは,環境状況,情報基盤・推進行動,および組織成果の相互関係として捉え,環境状況→推進行動・情報基盤→組織成果の関係とした。つまり,地方公共団体と民間企業の両組織体の組織成果に差があるとするなら,それは,情報システムの基盤・推進行動がどのように行われたかによる。さらに,情報基盤・推進行動がどの程度行われるかは,環境状況の差によるという仮説に基づくわけである。 その結果,組織成果では経済性において民間優位,社会性では地方公共団体が優位,職員特性では差がないということが判明した。また,情報基盤・推進行動については両者の格差が大きく,民間が著しく進んでいることが判明した。このような結果から,両者の情報システムの違いを,民間は「強者をつくる情報システム」であるのに対し,行政は「弱者をつくらない情報システム」であると特徴づけることができた。また,聞き取り調査では,現段階では,殆どの地方公共団体において組織や業務の改善・改革と情報技術との整合性は図られていないことが判明した。 また,本研究の一環として,民間企業のエクセレント情報システムモデル(EISモデル)による「顧客/住民満足型」「組織転換型」「業務改善・改革型」および「社会・環境共生型」の四類型を用いて別の視点からの両者の比較分析を行なったが,EISモデルが異なる組織体についても概ね妥当し,両組織体の共通性と相違性を明らかにすることができた。
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