1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640370
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小玉 英雄 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (40161947)
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Keywords | 一般相対論 / 量子重力 / 正準理論 / 完全拘束系 / 局所一様時空 / ブラックホール熱力学 / 摂動論 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度の有限自由度重力系について研究を発展させると共に、無限自由度系の正準構造と密接に関連する、一様膨張宇宙における線形摂動とブラックホール熱力学の2つの問題を研究した。得られた成果は次の通りである。 1.4次元局所一様時空:本年度は、昨年度の研究を発展させ、サ-ストンタイプがE^3型、Nil型、Sol型のコンパクトな空間を持つ局所一様重力系の相空間とそのシンプレクティック構造およびハミルトニアンを、すべての可能なトポロジーと局所一様群に対して決定した。これにより、SL_2R型を除いて、自明でないモジュライ自由度を持つすべてのコンパクト局所一様重力系の正準構造が決定されたことになる。特に、この解析の結果として、昨年度トーラス上のVII(0)型系で見いだした、シンプレクティック構造のモジュライセクターでの退化が他の系でもしばしば起こることを見いだした。さらに、ラプス関数が一様という条件下で、どのようなコンパクト局所一様系でもモジュライ自由度が力学的に凍結することを証明した。 2.膨張宇宙における線形摂動:平坦な空間を持つ一様等方宇宙における線形摂動の長波長極限と、完全に一様等方な有限自由度系に対する摂動との関連を詳しく分析し、それらの対応関係を一般に明らかにした。特に、物質が多成分スカラ場からなる系に対しては,一個のモードを除くと、両者が一致することを示した。 3.ブラックホールの熱力学:ブラックホール熱力学と量子重力理論との関係を明らかにするために、球対称ブラックホール時空上で量子スカラ場に対するエンタングルメント熱力学を構成し、温度を含めて、エンタングルメント熱力学がブラックホール熱力学と同じ構造を持つことを示した。 以上の成果のうち、1)についてはすでに論文を発表した(研究発表参照)。また、2)、3)については現在論文を投稿中である。
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[Publications] S.Mukouyama, M.Seriuma H.Kodama: "Can the entanglement entropy be the origin of black-hole entropy" Physical Review. D55. 7666-7679 (1997)
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[Publications] H.Kodama: "Can onical Structure of Locally Homogeneous Systems on Compact Closed 3-Manifolds of Type E^3,N:1 and Sol" Progress of Theoretical Physics. 99. 173-236 (1998)
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[Publications] 小玉英雄: "相対性理論" 培風館, 309 (1997)