1996 Fiscal Year Annual Research Report
下方非有界作用を持つ不安定系の量子化-積分核付きLangevin方程式を用いた確率過程量子化法
Project/Area Number |
08640393
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大場 一郎 早稲田大学, 理工学部, 教授 (10063695)
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Keywords | 不安定系の量子化 / Chern-Simons場 / 確率過程量子化 / Kernel付きLangevin方程式 |
Research Abstract |
(1).不安定系の量子化:大域的には不安定であっても局所的に極小領域がある場合,積分核を適切に選べば,場の量が不安定領域に落ち込むことを回避できるアルゴリズムを開発した.このアルゴリズムによれば場の量を十分長時間にわたって局所的極小領域に止めておける.その結果,この領域を中心として不安定系を非摂動的に量子化できる.本研究では,まず,負の係数のφ^4模型に対し積分核を工夫,効率的なアルゴリズムを開発し,不安定系の量子化を図った。その結果、積分核付きLangevin方程式に基づく確率過程量子化法は係数が正のみならず、負の場合でも望ましい作用を再現することが分かった。負の場合は物理量の期待値とその長時間平均との間に成り立つエルゴ-ト的性質は一般的に存在しないが、このアルゴリズムに基づく数値計算では時間平均が安定に存在する 一方、発散級数をとり扱うBorelの和による方法も、この期待値を与える。両者を比較すると数値計算の誤差範囲で一致していることが分かった。この結果、積分核付き確率過程量子化法は下方非有界作用のような系の量子化に有効であることが分かった。しかしながら、Borelの方法にはパラメータの解析接続に不定性があり、一方、確率過程量子化法には積分核の選び方に任意性がある。両者の間の関係を付ける必要がある。 (2).Chern-Simons場の量子化:Chern-Simonsゲージ場は特異的系であるうえに、普通の波動場とは異なり、場の方程式が時空間座標に関して1次の微分となっている。そのため、通常の理論で量子化するにはゲージを固定する必要がある。この枠組で量子化すればゲージを固定する必要はないものの、場の方程式が時空間座標に関て1次の微分となっていることから、基礎方程式が拡散型のLangevin方程式となって、その熱平衡極限の存在が保証されない。ここでは、適切な積分核を選ぶことによって、熱平衡極限の存在を保証する。今年度は、そのための初歩的計算を行った。
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[Publications] M.Kanenaga,A.I.Kirillov,V.Yu.Mamakin,M.Namiki,I.Ohba,E.V.Polyachenko and O.I.Zavialov: "On quantization of systems with actions unbounded from below" Theor.Math.Phys.(Moscow). (in press). (1996)