1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640416
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金崎 順一 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80204535)
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Keywords | 表面 / 半導体表面 / シリコン / 光誘起構造変化 / 電子励起誘起脱離 |
Research Abstract |
半導体再構成表面では、結晶内部では観測されない固有な現象として光誘起構造変化の発現が報告されている。これまで、500nmの励起光を用いた結果より、1)電子的機構によりアドアトム放出が起こること、2)アドアトム放出に強いサイト依存性があること、3)アドアトム放出収量が照射強度に対して非線形的に増大することが明らかとなっている。本年度は、初期励起状態と誘起される構造変化との量的・質的相関を明らかにし、構造変化を誘起する具体的な電子遷移を特定するとともに、緩和経路に関する知見をえた。 報告者らは400nm〜750nmの励起波長領域にわたり、Si原子放出収量の励起強度依存性を測定し、1)収量は励起波長によらず照射強度に対して非線形を示すこと、2)同一フルエンスにおけるSi原子放出収量の励起波長依存性が、2.1eV近傍に原子放出効率の最大値をもち、3.0eVまで裾を引いた広いピークを示すことを明らかにした。放出効率が最大となるエネルギー(2.1eV)は、Si(111)7x7表面電子状態バンド間の電子遷移エネルギーとよく一致している。今回得られた結果は、Si(111)7x7表面からのアドアトム放出が表面状態に蓄積された励起エネルギーの非線形局在によることを強く示唆している。さらに、収量の励起強度依存性における非線形性が2正孔局在機構であるSumiモデルによりよく説明できることがわかった。次に、報告者らは、構造変化の重要な特徴としてその強いサイト依存性が1つの指標であると考え、3.5,2.5および2.1eVの励起光に対して、センターアドアトムサイトとコーナーアドアトムサイト両サイトに生成される空格子点濃度の比をトンネル顕微鏡を用いた観察より求めた。いずれの波長においてもセンターアドアトムが2倍程度高い放出効率を示した。この結果は、構造変化を直接誘起できる励起状態は一つであり、初期に生成された他の電子励起状態は、その状態まで緩和することによってのみ構造変化に寄与できることを示唆するものと考えられる。
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