1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640416
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金崎 順一 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80204535)
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Keywords | 表面 / 半導体表面 / シリコン / 脱離 / 光誘起構造変化 / レーザー / トンネル顕微鏡 |
Research Abstract |
強い電子格子相互作用を有する擬2次元系という特徴を有する半導体再構成表面における光誘起構造変化の機構を明らかにするため、典型的な再構成半導体表面であるSi(111)7x7表面を用いて、誘起される微視的構造変化のトンネル顕微鏡観察及び構造変化に伴う脱離原子の高感度測定を共鳴イオン化分光法を用いて行ってきた。昨年度までに、この現象が電子的過程であり、a)表面電子系の励起により、b)その励起エネルギーが表面アドアトムサイトにc)非線形的に局在することにより構造変化(アドアトムの脱離により伴う空格子生成)が誘起されることを明らかにした。さらに、非線形局在が2正孔局在機構により説明できることを示した。本年度は、脱離過程における局在中間状態の性質と局在後脱離に至る緩和ダイナミクスに関する知見を得るため、脱離原子の速度分布測定を行った。 報告者は、いくつかの異なる表面励起条件(励起波長・パルス幅)に対する脱離Si原子収量の励起強度依存性及び脱離原子のエネルギー分布を測定した。その結果、(1)励起波長及びパルス幅に依らず、2正孔局在機構により脱離が起こること、(2)放出原子のエネルギー分布関数の形状は励起波長、パルス幅及び励起強度に依存しないこと、また、(3)その分布は0.03eVにしきい値運動エネルギーをもち、0.07eVでピークを持つことを明らかにした。(1)及び(2)の結果は、励起条件に依存せず、同一の局在中間状態を介して脱離が起こることを強く示唆している。また、(3)の結果は、表面励起光の光子エネルギーのごく一部しか脱離の運動エネルギーに利用されないことを示している。報告者は、これらの結果を説明するモデルとして、フォノンキックによる脱離モデルを考案した。このモデルでは、自由キャリアの局在に伴って放出される多数のフォノンエネルギーの一部のみが結合切断及び脱離に有効に利用されると考える。さらに、2正孔局在から脱離への断熱ポテンシャル面の乗り移り確率を量子力学的に取り扱った。このモデルにより、脱離Si原子のエネルギー分布をよく説明できることがわかった。
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