1996 Fiscal Year Annual Research Report
色素分子の光学スペクトルをプローブとした非晶質系のダイナミックスに関する研究
Project/Area Number |
08640417
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
兼松 泰男 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00211855)
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Keywords | 非晶質 / 共鳴蛍光 / ダイナミクス / レーザー |
Research Abstract |
サイト選択共鳴蛍光およびサイト選択励起スペクトル分光法のためのシステムをモード同期アルゴンレーザーあるいは同ネオジミウムYLFレーザー励起の色素レーザーを光源として整備し、色素-非晶質系における電子格子相互作用で重み付けられた有効状態密度(WDOS)を求めた。対象とする試料として、アルコール、芳香族系液体の急冷により、ガラス化したものを用い、これに、ポルフィリン系色素、イオン性色素を導入して、液体ヘリウム温度における共鳴蛍光(励起)スペクトルを解析して、0Kにおける1-フォノンサイドバンドスペクトルに相当するWDOSスペクトルを抽出し、これまで、鎖状あるいは架橋型非晶質ポリマーにおいて得られた結果と比較した。主要な結果は、ポリマーの場合と同様、WDOSスペクトはホスト非晶質に依存するが、そのピーク周波数と強度で規格化を行うと、形状が互いに一致する、すなわち、ダイナミックスの普遍性が存在していることを示唆している。ポリマー系に関する以前の結果は普遍的なダイナミックスがネットワーク構造の一般化された同質性に起源をもつのではないかという予想のもとに低分子分子性ガラスに研究対象を拡張したのだが、結果はこれに反し、系の動的構造に関するさらに深い考察を要請するものとなった。共鳴蛍光スペクトルの温度変化に関しては、極低温で得られたWDOSとサイトエネルギー分布をもとに一次の電子格子相互作用理論を用いて、ガラス転移温度より低温で観測されるスペクトルは概略再現されることがわかり、普遍的なダイナミクスはガラス固体全般を支配していることが見出された。
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