1998 Fiscal Year Annual Research Report
局在寸前の強相関遍歴電子系の磁性と超伝導の理論的研究
Project/Area Number |
08640434
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大川 房義 北海道大学, 大学院理学研究科, 教授 (00107442)
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Keywords | 近藤効果 / 局所スピン揺動 / 1 / d展開 / 局在モーメント磁性 / 遍歴電子磁性 / 高温超伝導 / キュリーワイス則 / メタ磁性 |
Research Abstract |
遍歴電子磁性と局在モーメント磁性の統一理論の完成は磁性の分野に於ける大きな課題である。この問題解決のためには何よりもまず、強相関電子系における局所量子スピン揺動効果を如何に正確に考慮するかという問題を解決しなければならない。局所量子スピン揺動効果を正確に考慮することは、近藤効果の有効模型であるアンダーソン模型を解く問題に帰着できる。この事実を利用して、局所量子スピン揺動効果を正確に考慮できる理論として、近藤効果を出発点としてサイト間スピン揺動効果を摂動で考慮する摂動理論を開発した。この摂動理論は数学的には無限次元からの展開、空間次元数をdとすると、1/d展開として定式化される。この理論枠組みには、解くべきアンダーソン模型を自己無撞着に決め、そして解くというかなり膨大な計算過程が必要とされる。この数値計算を実行すれば遍歴電子磁性と局在モーメント磁性の統一理解は可能と期待できる。しかし、近藤効果については従来の研究でほとんど完全に理解されている問題である。これまでの研究成果を利用して、遍歴電子磁性と局在モーメント磁性とがまさにクロスオヴァーする領域を除いて、次の個々のテーマについて相当に定量的な議論をした。1/d展開理論の応用により新しい成果を得たのは、(1)サイン波磁気構造とヘリカル磁気構造間の磁気構造のクロスオヴァー現象、(2)遍歴電子磁性におけるキュリーワイス則について、世の中で巾広く受け容れられている1/dの高次の機構に対する疑問から、新たに1/dの最低次の機構の提案、(3)銅酸化物高温超伝導体での準粒子とクーパー対形成相互作用を明らかにし、高温超伝導機構の解明、(4)これまでにない新しい型の磁気的交換相互作用の提案、(5)そして、新しい型の磁気的交換相互作用の応用で、重い電子系のメタ磁性機構の解明、等々である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 大川房義: "Relevance and irrelevance of three effective Hamiltonians for high-temperature superconductors" Physical Review B. 59巻13号. (1999)
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[Publications] 佐藤寛之: "Field-induced ferromagnetic exchange interactions in metamagnetic transitions of heavy-electron liquids" Physical Review B. 57巻3号. 5891-5899 (1998)
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[Publications] 大川房義: "Sinusoidal and Helical Structures in Itinerant-Electron Magnets" Journal of Physical Society of Japan. 67巻2号. 535-542 (1998)
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[Publications] 大川房義: "Magnetic Exchange Interactions between Quasiparticles in Itienrant-Electron Mgnets" Journal of Physical Society of Japan. 67巻2号. 525-534 (1998)
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[Publications] 大川房義: "Quantum and thermal spin fluctuations in itinerant-electron magnets" Physical Review B. 57巻1号. 412-425 (1998)
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[Publications] 大川房義: "Heavy quasiparticles and Cooper-pair interaction in the Hubbard model" Physical Review B. 54巻23号. 15388-15410 (1996)