1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640455
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
細糸 信好 京都大学, 化学研究所, 助教授 (30165550)
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Keywords | 非磁性層の磁性 / 磁気分極 / 間接交換相互作用 / ^<119Sn>メスバウア分光法 / ^<57>Feメスバウア分光法 / 金属人工格子 |
Research Abstract |
前年度はM/Au(M=Fe,Co,Ni)金属人工格子のAu中に、メスバウア元素である^<119>Snを挿入した試料を作製し、Snメスバウアスペクトルの内部磁場の大きさから各人工格子中のAuの磁気分極の様子を調べた。磁気分極と非磁性層を介した間接交換相互作用の関係を調べることは、本研究の第一の目的ではないが、重要な問題であるので、本年度は、Auに最も大きな磁気分極が観測されたCo/Au系で間接交換相互作用が存在するかどうかを詳細に調べた。Au buffer/[Co/Au]_<N-1>/Co/Au cover(N=1,2,31)の試料を作製し、磁化測定およびCo中に^<57>Feを挿入した試料のメスバウアスペクトルなどから、Au層によって隔てられたCo層間に、間接相互作用が存在するかどうかを検討した。その結果、N=31の試料は、一見反強磁性間接交換相互作用が存在する金属人工格子に特有のM-H曲線を示すが、実際にそのような磁化曲線を作る原因は間接交換相互作用ではなく、Co膜の垂直磁気異方性と静磁エネルギーの競合によって作り出された人工格子全体に広がる磁化配列によることが明らかとなった。このことは、間接交換相互作用の存在の有無を磁化曲線のみによって判別することが誤った結論を導く可能性があることを示している。我々の作製したCo/Au系では間接交換相互作用が働いている兆候はないが、Au中には磁気分極が存在し、二つの現象は直接に結びつくものではないことが明らかになった。間接交換相互作用が明瞭な系で磁気分極に特徴的な挙動が見られるかどうかを調べるため、Co/Ru系の作製を始めた。磁化曲線は、間接相互作用を持つ系に特有の形状をしているが、Co/Au系と同様の原因によることも考えられるので、現在系統的に調べている。二年間の研究を通じて得られた結果を現在、2つのfull paperにまとめて投稿している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Emoto, N.Hosoito, T.Shinjo: "Spin Penetration in Au Layers : ^<119>Sn Mossbauer Study of Co/Au Multilayers" Journal of Magnetism and Magnetic Materials. 156. 47-48 (1996)
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[Publications] N.Hosoito, K.Mibu, T.Ono, T.Emoto, T.Shinjo: "Relationship between Magnetoresistance Change and Antiparallel Magnetization Estimated by Neutron Diffraction in Giant Magnetoresistance Systems" Journal of Magnetism and Magnetic Materials. 156. 325-326 (1996)
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[Publications] S.Hamada, N.Hosoito, T.Shinjo: "Local Spin Polarization in Au Layers of Co/Au (111) Multilayers by ^<57>Fe Mossbauer Probes" Journal of the Physical Society of Japan. 66(1). 30-33 (1997)
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[Publications] T.Emoto, N.Hosoito, T.Shinjo: "Magnetic Polarization of Conduction Electrons at Au Layers in Fe/Au Multilayers by ^<119Sn> Mossbauer Spectroscopy" Journal of the Physical Society of Japan. 66(3). 803-808 (1997)
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[Publications] N.Hosoito, T.Emoto, T.Shinjo: "Non-Uniform Magnetization Process of Fe/Au GMR Multilayers Investigated by Polarized Neutron Diffraction" KENS REPORT-XI (KEK Progress Report). 139-140 (1997)
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[Publications] 濱田直, 細糸信好, 小野輝男, 新庄輝也: "^<57>FeメスバウアープローブによるCo/Au人工格子の磁気構造" 日本応用磁気学会誌. 22(掲載予定). (1998)