1996 Fiscal Year Annual Research Report
液体・ガラス転移におけるモード結合理論の実験的検証
Project/Area Number |
08640474
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 誠治 筑波大学, 物理工学系, 助教授 (90134204)
|
Keywords | ガラス転移 / モード結合理論 / 誘電測定 / ラマン散乱 / プロパノール / アルファ緩和 / ベータ緩和 / ボソンピーク |
Research Abstract |
最近になって弱い液体を中心として液体ガラス転移のダイナミクスの研究が理論、実験ともに盛んに行われるようになってきた。その理論のなかで最も有効とされているモード結合理論から導かれる結果について、広帯域スペクトロスコピーの詳しい実験を行って、その検証を行うのが本研究の目的であった。本研究は単年度研究であるが、これまでの測定技術の蓄積を十分に活かして、以下のような成果をあげられた。広帯域誘電測定では、時間領域反射法装置の導入により、より高い周波数まで測れるようになり、これまで用いてきたインピーダンスアナライザーと組み合わせることにより、1ミリルツから20ギガヘルツに至る極めて広い範囲の誘電測定が可能となった。その結果、プロパノール等の低級アルコールについてアルファ緩和の温度依存性を調べ、拡張指数型緩和関数のパラメータの温度依存性を詳しく調べることができ、臨界温度Tc以上ではほとんど温度に依存しないというモード結合理論に合う結果が得られた。また、緩和時間の温度依存性もTc付近でVTF則からずれ始めることもわかったが、モード結合理論の予想する様な急激な変化は見られなかった。さらに高温側の感受率スペクトルは広帯域の光散乱実験により調べられ、アルファ緩和がギガヘルツにくる高温の液体状態において、アルファ緩和からベータ緩和に至る領域のモード結合理論のべき乗則からの明らかなずれが観測された。以上のことから、モード結合理論は、非常に広い帯域の感受率スペクトルの温度依存性を定性的には十分に説明できるが、定量的な解析に用いるためには、Tc以下でのホッピング過程と、ボソンピークに対応する局在振動を取り込む必要があることがわかった。
|
-
[Publications] 小島誠治: "Corrrelation of Temperature Dependence of Quasielastic Light S cattering" Phys.Rev.B. 54. 222-227 (1996)
-
[Publications] 小島誠治: "Quick Measurement of Brillouin Spectra of Glass-forming Material" Jpn.J.Appl.Phys.35. 2879-2881 (1996)
-
[Publications] 小島誠治: "Raman Scattering Study of Boson Peak of Barium Borate Glass" Jpn.J.Appl.Phys.35. 2899-2902 (1996)
-
[Publications] 小島誠治: "Light Scattering Study of Glass Forming Liquid : Propylene Glycol" Physica B. 219. 273-275 (1996)
-
[Publications] 小島誠治: "Diluted Effects on n-Propanol" Physica B. 219. 568-570 (1996)
-
[Publications] 小島誠治: "Brillouin Scattering Study of a Glass-Forming Propylene Glycol" Jpn.J.Appl.Phys.35. 2925-2929 (1996)