1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640484
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
佐野 和博 三重大学, 教育学部, 助教授 (40201537)
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Keywords | 高温超伝導 / 強相関電子系 / d-pモデル / 数値的対角化 |
Research Abstract |
高温超伝導体における超伝導の発現メカニズムの解明をめざして、高温超伝導体の電子構造の基礎的な研究をおこなった。ここでは、特に電子間に働く強い斥力の効果が実効的に引力となり、超伝導が発現しているのであろうという立場から、どのように斥力が働けば超伝導が可能になるのかを探ることにした。そのため、高温超伝導体の電子構造をモデル化した、いわゆるd-pモデルを扱うことにし、なるべく近似を使わず数値的に直接確かめる事にした。 本年度では、まず第一段階として一次元の銅原子と酸素原子からなる一次元d-Pモデルを採用し、有限サイズのシステムを考え、これを数値的対角化の方法により解くことにより厳密な電子状態を求めた。一次元系ではLuttinger流体論が使え比較的小さなシステムでも超伝導状態が実現しているかどうか正確に判定することが可能である。 現在までに得られた結果によると、酸素原子の間の電子の飛び移りの効果を加えた一次元d-Pモデルでは、銅原子の位置に来た時に電子間に働くクーロン斥力Udが十分強ければ確かに超伝導が実現することがわかった。これはUdが強い時に働く、スピン揺らぎ的な引力の効果が表に表れて超伝導状態を引きおこしたものと解釈できる。 この超伝導発現機構は、従来一次元d-pモデルの数値的研究で知られてきた、銅原子の位置に来た電子と、酸素原子の位置に来た電子との間に働くクーロン斥力Updが引き起こす電荷揺らぎ的な超伝導機構とは本質的に異なるものである。またスピン揺らぎ的な引力による超伝導発現機構は、解析的な近似理論では良く知られていたが、一次元d-Pモデルを用いた数値的研究により確認した例は、本研究が初めと考えられる。 これらの成果は1996年度の秋の物理学会にて口頭発表し、また現在論文にまとめ投稿準備中である。
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