1997 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱による分子性蒸着非晶質の低エネルギー励起に関する研究
Project/Area Number |
08640486
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山室 修 大阪大学, 大学院・理学研究科, 講師 (20200777)
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Keywords | 中性子散乱 / 蒸着 / 分子性非晶質 / 低エネルギー励起 / ボゾンピーク |
Research Abstract |
前年度に開発した蒸着試料用中性子散乱クライオスタットを用いて,プロピレン分子(CH_2=CHCH_3,T_g=55K)およびベンゼン分子(C_6H_6)の蒸着ガラスを作成した。蒸着は,20Kのセル内壁に約5時間かけて0.15mmの厚みになるように行った。これらの試料に対して,高エネルギー物理学研究所のLAM-80ET分光器を用いた中性子散乱実験を行った。この分光器はパルス中性子を用いた逆転配置飛行時間型分光器で,マイカの(006)面をアナライザーに用いたときのエネルギー分解能は15meVである。プロピレンとベンゼンの蒸着ガラスに関して16-70Kの間の17点で弾性散乱ピーク強度を測定した。プロピレンはガラス転移温度である55K付近から,ベンゼン(ガラス転移は観測されていない)は同程度の分子量の分子性ガラスのガラス転移温度(〜100K)よりはるかに低い40Kから結晶化の影響と考えられる弾性散乱ピーク強度の増大が観測された。ベンゼンに関しては,完全に結晶化した試料の温度変化を蒸着ガラスと同様に16Kから測定した。蒸着ガラスと結晶のピーク強度の温度変化を比較することにより,蒸着ガラスの平均二乗振幅〈u^2〉は結晶の〈u^2〉より2倍以上も大きいことが分かった。このような蒸着分子ガラスの動的特異性が実験で確かめられたのは世界で始めてである。 中性子非弾性散乱実験と平行して,高エネルギー物理学研究所のSWAN分光器(0.003<Q<20Å_<-1>)による中性子回折実験も進行している。現在,蒸着試料用クライオスタットをセットするためのアダプターフランジの製作が完了し,バックグラウンド測定等の予備実験を行っている段階である。
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[Publications] A.Lindqvist: "Excess Heat Capacities due to the Low Energy Excitations of Molecular Glasses : An Approach Using the Soft Potential Model" Journal of Chemical Physics. 107(13). 5103-5107 (1997)
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[Publications] O-Yamamuro: "Calorimetric Study of Glassy and Liquid Toluene and Ethylbenzene : Thermodynamic Approach to Spatial Heterogeneity in Glass-Forming"
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[Publications] Journal of Physical Chemistry B. (発表予定).