1997 Fiscal Year Annual Research Report
原子衝突による高い振動励起分子の振動遷移,原子の組替えと解離過程の研究
Project/Area Number |
08640515
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Research Institution | SCIENCE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
恩田 邦藏 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (50256674)
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Keywords | 原子分子衝突 / 振動励起分子 / 原子の組替え / 分子の解離 |
Research Abstract |
H+H_2衝突系での振動遷移,原子の組替えと解離過程 原子と分子の衝突を記述するSchrodinger方程式を量子力学的に厳密に解くために,質量でスケールしたJacobi座標を超球座標に変換し,連続無限個である分子の解離状態を離散状態として取り扱う.超球座標で表されたSchrodinger方程式は2変数の偏微分方程式であるが,Discrete Variable Representation(DVR)法と差分法を組み合わせて数値的に厳密に解く.相互作用ポテンシャルが十分な精度で解析式で表されているH+H_2衝突系で,共線配置の衝突にこの方法を適用し,全エネルギーが2〜10eVの広い範囲で研究した.精度の高い相互作用ポテンシャルを採用し,H_2の振動遷移,組替えと解離過程がお互いに強く影響し合う衝突動力学を量子力学的に信頼できる方法による研究はH+H_2衝突系ではこれが最初の研究である. 衝突系の全エネルギーがH_2の解離しきい値から10eVの領域で,原子の組替えはH_2(v_i)の振動の始状態に余り関係なく0.2以下の確率であり,振動遷移とH_2の解離が主要な過程である.振動の始状態がv_i【less than or equal】4では,全エネルギーが10eVまではH_2(v_f)になる振動遷移が主要であり,解離確率は0.2以下である.V_i【greater than or equal】5では,振動状態が高くなるに従い,解離確率は大きくなり,解離が振動遷移や原子の組替えよりも圧倒的に優勢になる.全エネルギーが5eV程度では,振動の弾性衝突が非弾性衝突よりもはるかに優勢であるが,全エネルギーが5〜7eV程度では,H_2(v_i)の振動の始状態v_iと終状態v_fの間には|v_i-v_f|【less than or equal】1〜2の選択則が存在する.尤も,v_i【greater than or equal】10では,解離過程が主要である.更に,全エネルギーが高くなると,振動の始状態が低ければ,振動量子数が何単位も変わる振動遷移が起こり,振動の始状態が高ければ,解離が優勢である. 更に,H+H_2と同じ電子的ポテンシャルエネルギー曲面上で,HをDやTに変え,質量の違いによるH+H_2衝突動力学への同位体効果並びに衝突動力学における2体及び多体相互作用ポテンシャルの役割を明らかにする研究を行った.
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