Research Abstract |
従来Maxwell媒質・Voigt媒質など単純な粘弾性的性質を示す物質が知られていた.我々は今まで知られていない粘弾性的性質を示す新素材の開発を目的として,これらの単純な粘弾性媒質を基本的な構成要素とし,それらがすこしずつ性質を変え,複雑に絡み合って構成される複雑系粘弾性媒の性質を一般的に記述する理論を発展させようと努力している.このような基本的な理論を用いることで,媒質の新しい性質を構成要素の基本的な性質から一般的に予測したり,導いたりすることができると考えている.このような基本的な立場の成果は複雑系粘弾性媒質の性質を一般的に記述するばかりではなく,粘弾性新素材の開発に広く応用できるものであると考える. 研究成果の1部,特に,いろいろな媒質の性質が線形のスケール則を満たすような場合に関しては,小山・本谷・原,"最大エントロピーとなる複雑な地震活動",北海道大学地球物理学研究報告,60巻,77-95,1997に印刷され,また,媒質の構造がさらに複雑になり,数多くのスケール則が重なり合い単純な複雑系ではなく,複合系を作り出すような場合に関しては,Hara,H.,S.S.Lee,J.Koyama and S.Fujita,"Scaled Langevin equation for complex systems",Chaos,Solitons & Fractals,7,1997に発表された.さらに,粘弾性媒質にとらわれることなく,我々が独自に研究しているスケーリング過程が複雑な確率過程としてどのような基本的な特性を示すのか,原他,確率過程による通信路容量の一般化,統計数理,44,105-119,1996に,ランダムウオ-クの一般化として,Obata et al.,Curvature tensor of a statistical manifold,Phys.Rev.E56,213-226,1997に公表した.
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