1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08640545
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
福山 薫 三重大学, 教育学部, 教授 (00189979)
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Keywords | 氷河時代 / 気候変動 / 氷期・間氷期 / 琵琶湖 / 日本海 / 推移物分析 / 古気候モデル / 黄土 |
Research Abstract |
琵琶湖堆積物コアを数100年以下の時間分解能で再解析し、過去約100万年の氷河時代における琵琶湖を含む中央日本での気候変動、特に突発的な(1000年以下の時間スケールをもった)気候変化のシグナルを読みとってきた。これらの結果を、グリーンランド氷床コアや日本海等の海底堆積物コア等の、世界各地で活発に行われている氷河時代の気候変動に関する各種分析から導出された気候の記録と詳細に比較検討してきた。こうした解析をもとに、氷河時代の気候変動をもたらしてきたメカニズムについて概念モデルの構築を試みてきた。 例えば日本付近では、寒冷期から温暖期への遷移時に、日本海で東シナ海起源の汽水牲珪藻種が急増するとともに、琵琶湖底では粗い粒子が突発的に増加する。これは、この時期に海水準が上昇して対馬暖流が日本海に入り込んだ結果、日本付近の降水量がきわめて多くなり、琵琶湖の周辺域から湖心部へ大量の粗粒が流入したためと考えられる。また、最終最盛氷期やYounger Dryas期のような最寒冷条件下では、珪藻種組成の消滅により、東シナ海からの海水の供給停止が示唆された。琵琶湖では、粒子密度の相対的に大きな細粒がこの時期に増加する。これは、寒冷期には中国大陸などで乾燥地域が拡大して、高密度の黄土が温暖期よりも多く輸送されてきたものであろう。また、気温の南北勾配の強化に伴う大気大循環の劇的な遷移も、この偏西風による大陸からの黄土輸送に大きく関与したに違いない。温暖期に琵琶湖の粒子密度が一般に低い値を示すのは、上に述べた大陸からの黄土輸送が弱まったことに加えて、生命活動が活発になり密度の小さい有機物質系の沈殿が増えたことを意味している。
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[Publications] Fukuyama,K.: "Environmental assessment of the landuse and elimate around Ise Bay using satellite data and GIS" ASIA WATCH in Nature and Societies. 160-170 (1996)
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[Publications] Kashiwaya,K.: "Global Paleo-Hydrological Processes and Lake Biwa" Coastal and Estuarine Studies. 48. 171-181 (1995)