1997 Fiscal Year Annual Research Report
下末吉期海成層上限高度を変位基準とする九州の約13万年間の地殻変動
Project/Area Number |
08640577
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
下山 正一 九州大学, 理学部, 助手 (90136424)
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Keywords | 下末吉期 / 旧汀線高度 / 地殻変動 / 火山灰層序 / 古水深 / 貝化石 / 生痕化石 |
Research Abstract |
平成9年度の調査は、種子島・鹿児島・宮崎の隆起地域の調査を続けるとともに,陸上部に下末吉期海成層の知られていない臨海低地の野外調査とボーリング資料の収集を行った.対象とした地域は,北九州市・岡垣町・福岡市・佐賀市・鹿島市・白石町・福富町・岱明町・熊本市・八代市・出水市・川内市・加世田市・行橋市・大分市・臼杵市・佐伯市である.野外調査の結果,これらの地域では陸上部分に下末吉期海成層が存在しないことが判明したので,地下にのみ海成層が残されている可能性がある.そこで,既存のボーリング資料を収集・検討した結果,北九州市・岡坦町・福岡市・佐賀市・白石町・福富町・岱明町・熊本市・八代市・川内市・加世田市・行橋市・大分市・佐伯市の埋め立て地や臨海低地の地下に下末吉期海成層が発見された.下末吉期の海成層である証拠はコア試料から得られたテフラの層序関係と貝化石である.下末吉期の旧汀線高度は海面下にあり,これらは沈降地域であることが判明した. 平成8年度と9年度の調査結果から,隆起地域・沈降地域の下末吉期の旧汀線高度が得られたので,九州の東側と西側に分けて下末吉期の旧汀線高度を比較した.その結果,別府-島原地溝帯を境に,九州北部は全て沈降地域である.また,九州南部,特に宮崎平野と種子島は顕著な隆起地域であることが再認識された.しかし,九州南西部に沈降地域が存在する.現在および下末吉期の汀線高度を変位基準として,下末吉期とそれ以前の旧汀線高度を比較すると,下末吉期を境に,隆起から沈降へと地殻運動傾向の逆転が認められた.また,その逆のケースも存在する.したがって,中期更新世以後の九州の地殻変動はかなり複雑である.九州南部には曲降軸の存在が暗示される.新たに発見された曲降軸と外弧隆起軸(貝塚,1972)の隣接配置は西南日本外帯の隆起海岸と沈降海岸の隣接分布ときわめて調和している.
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