1996 Fiscal Year Annual Research Report
層状チャート相に見られる生物擾乱構造に基づく2.5億年前の海洋古環境の変動
Project/Area Number |
08640587
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角和 善隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (70124667)
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Keywords | 層状チャート / 生物擾乱構造 / 海洋古環境 |
Research Abstract |
比較的生痕が観察しやすい灰色珪質粘土岩と黒色有機質粘土岩が繰り返す三畳紀初期の地層が分布する丹波帯の芦見谷について検討した.芦見谷の三畳紀初期Smithian-Spathianの珪質粘土岩層約13.5mを野外で観察し,ほぼ全層準に亘って精密サンプリングを行った.黒色有機質粘土岩は大きく分けると3層準に産出する.第1層準は灰色珪質粘土岩との黒色有機質粘土岩の互層で,60cmに亘って発達する.ここでは生痕が著しく発達し,有機物は5cm以上下位層に持ち込まれており酸素レベルは高かった.第2層準は1.8m程の灰色珪質粘土岩のみの層を挟んで約3mに亘って有機物層が頻繁に出現する.ここでは下位は生痕が発達するが上位では殆ど見られず,酸素レベルが次第に低下したことを示す.この層準の最下部はやや厚い有機物層を伴う.第3層準は1.7m程度の有機物層を伴わない層の後に出現し,一枚ごとの有機物層が厚い.全体により珪質で一部は泥質チャートと言える.第2層準中部から第3層準中部までは黄鉄鉱が顕著に見られ,また生痕は殆ど確認できない.これらより酸素レベルは低下したと考えられる.この様な有機物層の発達層準は美濃帯の金華山・三田洞で検討した同時代の珪質粘土岩層でも見られ,かけ離れた両地域でほぼ対比できた.相違点としては美濃帯では珪質岩度岩が帯緑灰色を呈し,生痕もより発達しており,芦見谷より全体として酸素レベルが高いところで堆積したと考えられる.しかし有機物層は美濃帯の方がより単層として厚く全体の比率も高い.結論:(1)有機物に富んだ層は三層準見られ,これらは離れた地域で対比が可能であり,広域に亘って同時に有機物が堆積した.(2)酸素レベルは三畳紀初期には全体として200万年規模で低下傾向にあった.(3)堆積環境として海洋底層の酸素レベルが高かった地域でより有機物層が多いことは今後の検討課題となる.
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