1997 Fiscal Year Annual Research Report
層状チャート相に見られる生物擾乱構造に基づく2.5億年前の海洋古環境の変動
Project/Area Number |
08640587
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角和 善隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (70124667)
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Keywords | ペルム紀・三畳紀境界 / 生痕 / 無酸素 / 硫黄同位体化 / 海洋古環境 |
Research Abstract |
丹波帯芦見谷での三畳系下部層について,前年採集観察した試料を軟x線写真により堆積構造を更に詳細に検討した.その結果従来無構造に見えていた試料にも平行葉理,あるいはその葉理の乱された構造が見られ,肉眼・顕微鏡より正確に堆積構造,生痕を観察することが可能となった.また黄鉄鉱の形態,定量的ではないが全体的な量の変化,放散虫の量,有機物の量などそれぞれの関係が明らかとなった.その結果,(1)全体として自生の黄鉄鉱は葉理の保存,生痕の発達から見て酸素レベルの低い層準に多い傾向がある.(2)有機物の堆積と酸素レベルの変化は明瞭には関連していない.即ち基本的に海洋底がanoxicになったから有機物が堆積したのではなく,何らかの理由で基礎生産が上昇した結果有機物が海洋底に堆積した.(3)sulfateの硫黄同位体化はペルム系末から三畳系下部Scythianにかけて大きく急激に正へシフトすることが知られているが,黄鉄鉱の量的変化を見るとそのシフトは層状チャート相に黄鉄鉱が堆積した結果であると言える. 秩父累帯北帯のP/T境界をまたぐ露頭として有名な天神丸露頭でも芦見谷露頭と同様に全層準完全サンプリングを行い,その試料の切断を行った.軟X線を含めた詳細な検討は終了していないが,以下の点が明らかになった.(1)天神丸では赤色チャートはペルム系でも存在しない.(2)層状チャートは枚数にして3-10枚の範囲,厚さにして10-30cm以下の範囲で上方厚層化のリズムが明瞭に見られた.(3)このリズムはペルム系も上部に行くにしたがい不明瞭になる.(4)三畳系最下部?の黒色有機質粘土岩は明らかに微細な葉理の発達する部分と,塊状な部分があり,無酸素状態が長時間継続したのではなく酸素レベルの変動があったことを推定させる.
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