1998 Fiscal Year Final Research Report Summary
層状チャート相に見られる生物擾乱構造に基づく2.5億年前の海洋古環境の変動
Project/Area Number |
08640587
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Research Field |
Stratigraphy/Paleontology
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角和 善隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (70124667)
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Project Period (FY) |
1996 – 1998
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Keywords | 層状チャート / P / T境界 / 大量絶滅 / 生物擾乱構造 / 海洋古環境 |
Research Abstract |
2.5億年前の生物大量絶滅が長期に亘る海洋の無酸素環境による,との主張がある.しかし特に深海底が無酸素であるとの,検証に耐えうる科学的証拠は提示されていなかった.そこで続成環境における妨害を受けやすい化学組織ではなく,堆積時の海底面の環境を示す最も信頼できる手法として,底生生物の活動の証拠,生痕の発達度を層状チャート相で検討した.その際,研磨面だけでなくソフトX線写真による観察,またメスバウアーによる鉄鉱物の酸化状態の検討による裏付けも予察的に行った.その結果,長期的変動としては, (1)ペルム紀末から三畳紀初期に亘って無酸素の状態が継続したとの考えは明らかに誤りで,時にはかなりの酸素レベルに達した.(2)ペルム紀/三畳紀境界ではその前後anoxicであったが,一時的に酸素レベルが高くなったときがある.これをoxygenation eventと呼ぶ.この意義は不明である.(3)三畳紀最初期Griesbachianの黒色炭質泥岩の堆積時期にも,suboxic程度の酸素レベルに達したことがある.(4)その後Dienerian?〜Smithian初期?の珪質粘土岩堆積時にはほぼanoxicであった.(5)Smithianには珪質粘土岩と炭質泥岩の互層が一部発達するが,主にsuboxicで時にはoxicと言える状態になった.(6)Anisianのチャート堆積直前に再び殆どanoxicとなった.(7)問題点としては,チャートでは続成時の強いcementationにより元々の構造が観察しづらいこと,底生生物も大量絶滅後の回復が遅れたとすると,生痕による酸素レベルの変動はより低酸素のほうに系統的にづれている可能性があること,そもそもチャートの堆積していた深海底での底生生物の活動度,oxicな環境での生痕の発達程度などが判っていないこと,等が挙げられる.これらは今後の検討が必要である.
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[Publications] 角和善隆: "チャート相 P/T境界と海洋古環境"月刊 地球. 19. 150-153 (1996)
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[Publications] 角和善隆: "ペルム紀後期の層状チャートの特徴とペルム紀末の生物絶滅事件"大阪微化石研究会誌 特別号. 10. 77-86 (1997)
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[Publications] 角和善隆: "三畳紀古世の珪質粘土岩層中の放散虫、有機物、黄鉄鉱について"大阪微化石研究会誌 特別号. 11. 71-80 (1998)