1997 Fiscal Year Annual Research Report
浮遊性有孔虫化石群集による鮮新世以降の北西太平洋表層水古環境
Project/Area Number |
08640594
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
徐 学東 熊本大学, 理学部, 助手 (70274686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾田 太良 熊本大学, 理学部, 教授 (60108454)
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Keywords | 東シナ海・沖縄トラフ / AMS^<.14>C放射年代 / 浮遊性有孔虫化石群集 |
Research Abstract |
本年度では,日本近海後期第四紀における黒潮流路の変化を把握するため,東シナ海から採取された3本のピストン・コアKH82-4-14,RN80-PC3とBO94-20 PN3を対象にし,浮遊性有孔虫殻のAMS 14C放射年代を測定と浮遊性有孔虫の群集解析をおこなった.3本のピストン・コアはそれぞれ東シナ海北部,沖縄トラフ北部と沖縄トラフ中部の水深800〜1000mの海底から採取された柱状堆積物である。コア堆積物中に含まれた火山灰Ah(約6,300年前)と火山灰AT(約24,000年前)及びAMS放射性同位体14Cの年代測定により、3本のコアは過去15,000年〜30,000年間の連続的な堆積記録をもつことが分かった。堆積物中の浮遊性有孔虫化石の群集解析によりこの海域の環境変遷は以下のような特徴があることが判明した:最終氷期から16,000年前までは表層水の温度は現在より低く、栄養レベルの高い水塊であった。16,000年前から10,000年前までは、表層水温は徐々に高くなり、塩分が非常に低下した時期であり、10,000年前から6,000年前までは表層水温著しく高くなったと推定される。8,000か6,000年前から現在にかけては、表層水状況は現在とほぼ変わらず、水温が高く、栄養レベルがやや低い状態であったと考えられる。推算した表層水温は最終氷期から完新世にかけて、約5。Cの差があった。更に、東シナ海北部の表層水の性質は沖縄トラフとでは異なっており、東シナ海北部は沖縄トラフと比較して全般に2。C程度低い水温をしめす。16,000年前から10,000年前にかけての著しい低塩分水の影響は東シナ海北部の方がより顕著であったと推定される。東シナ海過去30,0OO年においては,最終氷期から12,000年前まで海水準の低下にともない沿岸水の影響は強かった.その後,海水準の大規模の上昇に伴い海岸線,河口が陸に向かって後退し,沿岸水の影響が弱くなり,黒潮の影響が強まった.約10,000年前から黒潮の影響は顕著になり,8,000年前以降は、その強い影響は安定していたことを明らかにした。
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